
関係人口施策で81.4%が成果を実感。ふるさと住民登録制度も68.3%が評価――全国473自治体調査から見える地方創生の現在地
人口減少や東京一極集中が続くなか、地方創生の新たなキーワードとして注目されているのが「関係人口」「ふるさと住民登録制度」「転職なき移住」です。
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の伊藤将人氏が実施した全国自治体調査により、自治体現場での取り組み状況や評価が明らかになりました。
調査対象は全国473自治体。関係人口創出施策では81.4%が成果を実感し、2026年度から本格運用が始まる「ふるさと住民登録制度」についても68.3%の自治体が肯定的に評価しています。
本記事では、調査結果をもとに地方創生の現状と今後の可能性について読み解きます。
- 全国473自治体調査の概要
- 関係人口施策で81.4%が成果を実感
- 図解①:関係人口施策の現状
- ふるさと住民登録制度とは何か
- 図解②:ふるさと住民登録制度の評価
- 自治体DXの現状
- 移住促進とDXの課題
- まとめ
全国473自治体調査の概要
今回の調査は、国際大学GLOCOM講師の伊藤将人氏を研究代表者として実施された全国自治体調査です。
一般社団法人自治体DX推進協議会(GDX)が調査実施を受託し、全国の自治体へ調査票を送付。473自治体から有効回答を得ています。
調査テーマは以下の通りです。
- 関係人口政策
- ふるさと住民登録制度
- 移住促進DX
- 転職なき移住
- テレワーク移住
地方創生政策の実態を全国規模で把握した貴重な調査として注目されています。
関係人口施策で81.4%が成果を実感
調査によると、「関係人口創出施策を実施している」と回答した自治体は65.7%に達しました。
さらに実施自治体のうち、成果について回答した自治体の81.4%が「成果が出ている」「どちらかといえば成果が出ている」と回答しています。
これは、地域に継続的に関わる人材を増やす取り組みが一定の成果を上げていることを示しています。
一方で18.6%は成果を実感できておらず、施策内容や運営方法による差も見えてきています。
図解①:関係人口施策の現状
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 施策を実施している自治体 | 65.7% |
| 成果が出ている | 20.3% |
| どちらかといえば成果が出ている | 61.1% |
| どちらかといえば成果が出ていない | 14.7% |
| 成果が出ていない | 3.9% |
従来の地方創生は「移住者数」が成果指標になりがちでした。しかし近年は、地域に何度も訪れたり、地域活動に参加したりする「関係人口」の重要性が高まっています。
今回の調査結果は、その方向性が自治体現場でも支持されていることを示しています。
ふるさと住民登録制度とは何か
ふるさと住民登録制度は、実際に居住していなくても継続的に地域と関わる人を「ふるさと住民」として登録する仕組みです。
総務省は2026年度から本格運用を予定しており、各地でモデル事業も進められています。
制度の狙いは、定住人口だけに依存しない新しい地域づくりです。
地域イベントへの参加、地域産品の購入、地域活動への協力など、多様な関わり方を制度として可視化しようとしています。
図解②:ふるさと住民登録制度の評価
| 評価 | 割合 |
|---|---|
| 評価する | 11.6% |
| どちらかといえば評価する | 56.8% |
| どちらかといえば評価しない | 23.4% |
| 評価しない | 8.3% |
肯定的評価は68.3%に達しており、多くの自治体が制度に期待を寄せています。
一方で31.7%は慎重な姿勢を示しており、制度設計や運用方法については今後も議論が続くとみられます。

自治体DXの現状
今回の調査では、移住促進業務におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の現状についても明らかになりました。
移住促進業務のDXに対して「関心がある」「どちらかといえば関心がある」と回答した自治体は83.1%に達しています。
しかし実際に移住促進DXへ取り組んでいる自治体は48.8%にとどまり、半数以上がまだ実装段階に至っていないことが分かりました。
つまり自治体現場ではDXへの期待は高いものの、人材や予算、ノウハウ不足などにより実装が追いついていない状況が見えてきます。
図解③:移住促進DXの現状
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| DXに関心がある | 22.8% |
| どちらかといえば関心がある | 60.3% |
| DX実施中 | 48.8% |
| DX未実施 | 51.2% |
調査結果からは、「関心83.1%」に対して「実施48.8%」という大きなギャップが存在していることが分かります。
今後の地方創生では、この実装ギャップをどう埋めるかが大きなテーマになりそうです。
移住促進DXの中身は情報発信が中心
DXに取り組む210自治体へ具体的な内容を尋ねたところ、多くは情報発信や相談対応に集中していました。
図解④:自治体DXの実施内容
| 実施内容 | 割合 |
|---|---|
| 移住関連情報発信のDX | 93.8% |
| 移住相談のDX | 71.4% |
| 交流支援DX | 限定的 |
| 実態把握・効果検証DX | 限定的 |
多くの自治体がWebサイトやSNS、オンライン相談窓口などの整備を進めています。
一方で、関係人口との継続的な交流支援やデータ分析、効果測定まで取り組めている自治体はまだ少数派です。
今後は「情報発信するDX」から「成果を測るDX」への進化が求められています。
転職なき移住とテレワーク移住の現在地
近年注目される「転職なき移住」についても調査が行われました。
転職なき移住とは、都市部の企業へ勤務しながら地方へ移住するライフスタイルです。
今回の調査では58.1%の自治体が取り組みを実施していることが分かりました。
しかし、受け皿となる公営テレワーク施設を持つ自治体は21.6%にとどまっています。
図解⑤:転職なき移住の現状
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 転職なき移住施策を実施 | 58.1% |
| 実施していない | 41.9% |
| 公営テレワーク拠点あり | 21.6% |
| 公営テレワーク拠点なし | 78.4% |
テレワーク移住への期待は高いものの、ハード面の整備はまだ途上にあることが見えてきました。
AI×地方創生の視点
今回の調査結果から見えてくるのは、地方創生の主戦場が「人口獲得競争」から「関係人口の創出」へ移りつつあるということです。
従来は移住者数そのものが重要視されていましたが、今後は地域に継続的に関わる人々との接点づくりが重要になります。
ここで大きな役割を果たすのがAIやDXです。
例えば、
- 関係人口データの分析
- 移住相談のAIチャットボット化
- 観光・移住情報の自動発信
- ふるさと住民との継続コミュニケーション
- 地域イベントのマッチング
などは生成AIとの相性が非常に良い分野です。
自治体DXは単なる業務効率化ではなく、「地域とのつながりを可視化し育てる仕組みづくり」へ進化していく可能性があります。
この記事のポイント
- 関係人口施策実施自治体は65.7%
- 実施自治体の81.4%が成果を実感
- ふるさと住民登録制度を68.3%が肯定評価
- 移住促進DXへの関心は83.1%
- 実際のDX実施率は48.8%
- 転職なき移住は58.1%が実施
- 公営テレワーク拠点整備は21.6%
まとめ
全国473自治体調査からは、地方創生政策が新しい段階へ入りつつあることが見えてきました。
関係人口施策やふるさと住民登録制度への期待は高く、多くの自治体が新しい地域との関わり方を模索しています。
一方で、DXへの関心は高いものの実装はまだ道半ばです。
今後はAIやデジタル技術を活用しながら、移住者だけでなく「地域を応援する人」をどう増やしていくかが地方創生の重要なテーマになるでしょう。
参考情報
- 国際大学GLOCOM「地方移住促進をめぐるDXとテレワーク移住/転職なき移住と関係人口政策・ふるさと住民登録制度に関する全国自治体調査」
- 一般社団法人自治体DX推進協議会(GDX)
- 総務省 ふるさと住民登録制度ガイドライン


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