

福島県郡山市に本社を置くEvoMate株式会社は2026年9月1日、営業活動を支援するAI社員サービス「EvoMate Sales」の提供を開始しました。
商談内容を記録することで、議事録、営業日報、お礼メール、タスク整理などをAIが支援。蓄積された商談情報から企業ごとの営業プロセスや知識を学び、営業担当者と組織を継続的に支える仕組みです。
EvoMate株式会社は、地域企業のデジタル化や新規事業開発を13年間支援してきた株式会社プレイノベーションが、2026年7月に設立した子会社です。
背景にあるのは、地方企業が直面する深刻な人手不足と、ベテラン社員の退職によって営業ノウハウや顧客情報が失われる「組織知の喪失」です。
単に生成AIツールを導入するのではなく、AIを日常業務へ組み込み、会社の仕事を覚える「仲間」として育てることを目指しています。
福島県郡山市でEvoMate株式会社を設立
EvoMate株式会社は2026年7月27日、株式会社プレイノベーションの100%子会社として設立されました。
社名の「EvoMate」は、進化を意味する「Evolution」と、仲間を意味する「Mate」を組み合わせた名称です。
企業理念として「人とAIの共創で、進化し続ける組織へ」を掲げ、現場で働きながら企業固有の知識や仕事の進め方を学ぶ「AI社員」シリーズを展開します。
| 会社名 | EvoMate株式会社 |
|---|---|
| 設立日 | 2026年7月27日 |
| 所在地 | 福島県郡山市本町1丁目14-19 2階 |
| 代表者 | 代表取締役 菅家元志氏 |
| 親会社 | 株式会社プレイノベーション |
| 事業内容 | AI社員シリーズ「EvoMate」の企画・開発・提供 |
| 主なサービス | EvoMate Sales、導入支援、個別開発 |
AIの研究開発企業が東京などの都市部に集中する一方、地方企業の業務、組織、商習慣を理解するには、地域の現場に継続的に関わることが欠かせません。
EvoMateは、AI技術と地域企業への伴走支援の両方を組み合わせたサービスを福島から展開しようとしています。
営業AI社員「EvoMate Sales」とは
EvoMate Salesは、営業担当者の商談や営業会議にAIを組み込み、商談後に発生する記録、整理、共有などの業務を支援するサービスです。
利用者が毎回複雑なプロンプトを作成したり、複数のシステムへ同じ内容を入力したりするのではなく、商談を録音するところから業務を始められる設計を採用しています。
EvoMate Salesが支援する主な業務
- 商談内容の記録
- 議事録の作成
- 営業日報の作成
- 顧客へ送るお礼メールの下書き
- 次に行うタスクの整理
- 商談内容の社内共有
- 営業状況の可視化
- 成功事例や営業ノウハウの蓄積
同社によると、EvoMate Salesは日々蓄積される商談情報から、その会社の仕事の進め方や営業上の「勝ち筋」を学習していきます。
営業担当者個人の経験や記憶だけに依存していた情報を組織に蓄積し、チーム全体で活用できる状態を目指しています。
一般的な営業支援ツールとの違い
営業分野では、顧客情報や商談状況を管理するSFA、顧客との関係を管理するCRM、議事録を作成する音声認識サービスなど、すでに多くのデジタルツールが利用されています。
しかし、システムを導入しただけでは、入力が継続されない、情報が更新されない、担当者ごとに使い方が異なるといった問題が発生します。
特に人員の限られる地域企業では、新しいツールの操作方法を覚え、運用ルールを整え、利用状況を管理すること自体が負担になる場合があります。
EvoMate Salesは、ツールへ人間の業務を合わせるのではなく、日常の商談を起点としてAIが動く仕組みを重視しています。
| 比較項目 | 一般的な営業管理ツール | EvoMate Salesが目指す形 |
|---|---|---|
| 情報入力 | 担当者が入力・更新する | 商談の記録を起点にAIが整理する |
| 利用開始 | 操作やルールの習得が必要 | 録音から始められる設計 |
| 主な役割 | 顧客情報や案件の管理 | 記録、整理、下書き、共有を支援 |
| 知識の蓄積 | 入力された項目を保存 | 商談から企業固有の知識を蓄積 |
| 目的 | 営業活動の管理 | 営業担当者と組織の成果向上 |
もっとも、実際にどこまで自動化できるかは、企業の業務フロー、利用環境、データの状態、外部システムとの連携によって異なります。
「AI社員」という名称は、人間と同じ法的・組織的な社員を意味するものではなく、複数の営業支援業務を継続的に担うAIサービスを表した呼称と捉える必要があります。
13年間で330社以上の地域企業を支援
EvoMateの事業につながったのは、親会社であるプレイノベーションが福島・東北で続けてきた企業支援です。
代表の菅家元志氏は、東日本大震災後の復興支援に関わったことをきっかけに福島県郡山市へ戻り、2013年5月にプレイノベーションを創業しました。
創業当初は、幼児向けのお絵かきアプリや保育業務支援システムなど、教育・子育て分野を中心に事業を展開していました。
しかし、実証実験から事業化へ進めなかったサービスや、利用者を獲得しても収益化できなかったアプリ、投資を回収できなかったシステム開発もあったといいます。
こうした試行錯誤を経て、地域企業のデジタル新規事業やDXを支援する事業へ軸足を移しました。
これまでに支援した企業は330社を超え、教育、福祉、医療、交通、建設、製造、観光など幅広い業種に及びます。
企業ごとに異なる課題を見つけ、解決方法を検討し、実装、研修、マニュアル整備、定着まで支援する伴走型の方法を続けてきました。
人による伴走支援が直面した限界
地域企業に深く関わる伴走型支援は、それぞれの企業に合った解決策を作れる一方、支援できる企業数には限界があります。
専門人材が一社ずつ状況を確認し、解決策を検討し、現場への定着まで支援するためには、多くの時間と人員が必要です。
さらに、支援を受ける地域企業側でも人材不足が進行しています。
- 求人を出しても応募者が集まらない
- 採用しても教育を担当する人がいない
- 一人の社員が複数の業務を抱えている
- 新しいシステムを覚える時間が取れない
- 退職者とともに顧客情報や業務ノウハウが失われる
- 経験豊富な社員の判断基準を引き継げない
PR TIMES STORYでは、経済産業省の資料を基に、東北地方では2040年に働き手が53万人不足するとの推計も紹介されています。
採用だけで人手不足を解消することが難しくなる中、人を増やさなくても業務を継続できる仕組みと、企業内の知識を失わずに蓄積する仕組みが求められています。
この課題に対する一つの回答として構想されたのが、AIが企業の業務を覚え、継続的に支援する「AI社員」です。
自社の営業活動でAIを半年間検証
プレイノベーションは2025年、自社の営業活動にAIを組み込み、営業担当者2人を対象に約半年間の検証を実施しました。
商談、営業会議、その準備や振り返りにAIを組み込み、日常業務の中で継続的に利用したとしています。
| 検証項目 | 自社検証で確認された変化 |
|---|---|
| 会議・準備時間 | 約75%削減 |
| 商談数 | 約2.1倍 |
| 商談の質 | 独自評価で約1.5倍 |
| 受注数 | 約3倍 |
これらはプレイノベーション社内における検証結果であり、EvoMate Salesを導入したすべての企業で同じ成果が得られることを保証するものではありません。
また、対象者が2人であるため、一般的な導入効果として判断するには、今後さらに多くの企業や業種での検証が必要です。
重要なのは、同社自身も成果の理由を「AIを導入したから」と単純に説明していない点です。
AIを営業プロセスの一部として設計し、日々の業務へ組み込んだことで変化が生まれたとしています。
東北20社が参加した「営業AIラボ東北」
自社検証に続き、2026年5月から7月には、東北地方の企業20社が参加する実証プログラム「営業AIラボ東北」が実施されました。
期間は3カ月で、全3回のプログラムとして実施。参加企業へ一方的にAIの使い方を教えるのではなく、企業と一緒に営業とAIの新しい関係を検証する場として位置付けられました。
β版では商談の録音を起点に議事録や日報を作成し、営業活動の記録を支援しました。
一方、参加者全員が継続的に利用できたわけではありません。
終了時のアンケートに回答した23人のうち、8人は実証期間中に一度も利用しなかったと回答しています。
利用しなかった主な理由は、動作環境の制約と、業務のどこで使うかが定まらなかったことでした。AIの出力品質を理由に挙げた人はいなかったとされています。
この結果は、AIサービスの定着を左右するのがモデルの性能だけではないことを示しています。
どれほど高性能なAIでも、利用する端末やセキュリティ環境に対応していない場合や、業務フローの中で使う場面が明確になっていない場合は、現場に定着しません。
地域企業のAI導入を阻む「導入前と導入後の壁」
営業AIラボ東北を通じて、同社は地域企業がAI活用を進める際に直面する課題を、導入前と導入後の二つに分けて整理しました。
| 段階 | 主な課題 |
|---|---|
| 導入前 | サービス選定の迷い |
| 導入前 | 情報管理やセキュリティへの不安 |
| 導入前 | 費用対効果が分からない |
| 導入後 | AIを利用するための技術習得 |
| 導入後 | 環境構築と人材育成 |
| 導入後 | 実際の業務へ定着させる難しさ |
これらの課題は、AIを導入することや、従業員にAIを使わせること自体が目的になった場合に発生しやすくなります。
最初に考えるべきなのは「どのAIを導入するか」ではなく、「どの業務を改善し、どのような成果を得たいか」です。
EvoMate Salesも、営業現場でAIを使うこと自体ではなく、記録作業を減らす、顧客対応に使える時間を増やす、営業情報を組織に残すといった成果を中心に設計されています。
「Company Intelligence」で組織の知識を蓄積
EvoMateが掲げる重要な考え方の一つが「Company Intelligence」です。
これは、個人がAIを使って文章を作成したり、業務を効率化したりするだけでなく、AIを通じて会社全体の知識や判断材料を蓄積し、組織として考える力を高める構想です。
営業担当者が商談で得た情報は、担当者個人のメモや記憶の中に残りやすく、組織全体で活用できない場合があります。
担当者が退職、異動、休職すると、顧客ごとの対応方法や過去の経緯まで失われることもあります。
商談内容を継続的に記録し、検索・分析できる形で蓄積すれば、担当者以外も顧客の状況を理解しやすくなります。
さらに、成果につながった商談の共通点や、失注につながった課題を分析することで、営業プロセスそのものを改善できる可能性があります。
大阪公立大学との「組織メタ認知」研究
Company Intelligenceの構想には、産学連携による研究も関係しています。
プレイノベーションは、大阪公立大学大学院情報学研究科の油谷知岐特任助教と「組織メタ認知」に関する共同研究を進めています。
組織メタ認知とは、組織が自分たちの状態、能力、知識、課題を客観的に捉え、改善につなげる考え方です。
個人が自分自身の考え方や理解度を振り返るメタ認知を、組織の運営や戦略へ広げたものと考えられます。
共同研究の成果として、生成AIを活用した組織運営戦略や、構成員の業務知識を捉える方法に関する論文が、電子情報通信学会の知能ソフトウェア工学研究会で発表されています。
地域企業への伴走支援で得た現場の知見と、組織メタ認知に関する理論を組み合わせ、製品設計へ反映する取り組みです。
導入時に確認すべき課題
営業AI社員が実際に商談を記録し、議事録やメールを作成する場合、利便性だけでなく情報管理も重要になります。
商談には、顧客の氏名、連絡先、契約条件、見積金額、経営課題、未公開の商品情報などが含まれる可能性があります。
導入企業が確認すべき主な項目
- 商談相手から録音の同意をどのように得るか
- 音声データや文字起こしデータの保存場所
- 保存期間と削除方法
- 入力データがAIモデルの学習に使われるか
- 社内の誰が商談記録を閲覧できるか
- 誤った議事録やメールを人間が確認する仕組み
- 既存のSFA・CRMとの連携方法
- 退職者や異動者のアクセス権限管理
- 情報漏えい発生時の報告・対応方法
- 導入効果を測定する指標
AIが作成した議事録やお礼メールには、聞き取り間違いや事実と異なる内容が含まれる可能性があります。
顧客へ送信する文章や、受注判断に使用する情報については、人間が内容を確認する運用が必要です。
AI社員は地域企業の人手不足を解決できるか
AI社員は、人間の従業員をそのまま置き換えるものではありません。
顧客との信頼関係を築くこと、相手の表情や状況を踏まえて判断すること、最終的な契約条件を決定することなど、営業活動には人間が担うべき役割が残ります。
一方、議事録、日報、情報整理、メールの下書きといった業務をAIが支援すれば、営業担当者が顧客と向き合う時間を増やせる可能性があります。
また、商談情報を会社に蓄積することで、退職や異動による知識の喪失を抑えられる可能性もあります。
地域企業にとって重要なのは、人間かAIかを選ぶことではなく、人間が担当する仕事とAIへ任せる仕事を適切に分けることです。
EvoMate Salesが地域企業の現場に定着するかどうかは、AIの性能だけでなく、操作負担、情報管理、既存業務との接続、導入支援、継続的な改善に左右されるでしょう。
まとめ
福島県郡山市のEvoMate株式会社は2026年9月1日、営業AI社員サービス「EvoMate Sales」の提供を開始しました。
商談の記録を起点に、議事録、日報、お礼メール、タスク整理などをAIが支援し、企業固有の営業知識を蓄積するサービスです。
その背景には、プレイノベーションが13年間で330社以上の地域企業を支援する中で直面した、人による伴走支援の限界と、地域企業の人手不足があります。
自社検証では、会議・準備時間の約75%削減や商談数の増加などが報告されていますが、対象者は2人であり、一般的な導入効果を示すものではありません。
東北20社による実証では、利用が進んだ企業がある一方、環境上の制約や利用場面が定まらず、一度も使わなかった参加者も確認されました。
この結果からも、AIの導入だけでは業務改革は実現せず、現場の業務フローへ組み込み、継続的に使える状態を作る必要があることが分かります。
「AI社員」という新しい呼び方が注目されますが、本質はAIへ仕事を丸ごと任せることではありません。
人間の判断を残しながら、記録、整理、共有、知識の蓄積をAIが支援し、人が顧客や課題に向き合う時間を確保する取り組みです。
福島発の営業AI社員が、地域企業の人材不足と業務の属人化に対する実用的な選択肢となるか、今後の導入事例と検証結果が注目されます。
English Summary
EvoMate Inc., based in Koriyama, Fukushima Prefecture, launched its AI sales employee service, “EvoMate Sales,” on September 1, 2026.
The service uses recorded sales conversations to support the preparation of meeting minutes, sales reports, follow-up emails and task lists. It is also designed to accumulate company-specific sales knowledge and working practices.
EvoMate was established in July 2026 as a wholly owned subsidiary of Plainnovation Inc., which has supported more than 330 regional companies over 13 years.
In an internal six-month test involving two sales representatives, the company reported a reduction of approximately 75 percent in meeting and preparation time. However, these results were limited to its own internal test and do not guarantee similar outcomes for other companies.
A separate three-month pilot program involved 20 companies in the Tohoku region. The results indicated that AI adoption depends not only on output quality but also on operating environments, workflow design and ongoing implementation support.
EvoMate Sales represents an attempt to address labor shortages and the loss of organizational knowledge by embedding AI into daily sales processes rather than requiring employees to learn another standalone tool.

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