

北海道旭川市の平和通買物公園で、エッジAIカメラを活用した人流解析の実証実験が始まりました。
株式会社ウィルグループが2026年9月2日に発表したもので、買物公園内の4エリアにAIカメラを設置し、通行人数だけでなく、滞在傾向や推定年代、推定性別などの統計データを取得します。
実証期間は、2026年8月21日から9月30日までを予定しています。
今回の取り組みは、人が「何人通ったか」だけではなく、「どの場所に、どのような人が、どの程度滞在したか」を可視化し、中心市街地の活性化や公共空間の利活用につなげる試みです。
映像はカメラ内部で即座に数値データへ変換され、画像や動画を保存しない仕組みが採用されています。
旭川市の平和通買物公園でAI人流解析を実施
株式会社ウィルグループは、旭川市と官民連携組織「買物公園エリアプラットフォーム」が進める広場化実証実験「まちにち計画」において、エッジAIカメラによる人流解析を実施します。
実証名称は「『まちにち計画』におけるAIカメラ人流解析業務」です。
旭川平和通買物公園内の1条通、3条通、5条通、7条通の4カ所に、それぞれ1台のエッジAIカメラを設置します。
カメラによる連続的な計測を通じて、場所や時間帯によって人の流れや滞在状況がどのように変化するかを分析します。
| 実証名称 | 「まちにち計画」におけるAIカメラ人流解析業務 |
|---|---|
| 実施期間 | 2026年8月21日(金)~9月30日(水)予定 |
| 実施場所 | 旭川平和通買物公園 |
| 設置エリア | 1条通、3条通、5条通、7条通の4カ所 |
| 設置台数 | 各エリア1台、合計4台 |
| 実施内容 | 通行量、滞在状況、推定年代、推定性別などの連続自動計測と解析 |
| データ処理 | カメラ上で映像を統計データへ変換し、画像・動画は保存しない |
日本初の恒久的歩行者天国として開設
旭川平和通買物公園は、1972年に日本初の恒久的歩行者天国として開設されました。
JR旭川駅前から中心市街地へ延びる通りとして、長年にわたり、地域商業や市民生活、イベント、文化活動の中心的な役割を担ってきました。
しかし、ライフスタイルの変化や郊外型商業施設の拡大、インターネット通販の普及などにより、中心市街地を取り巻く環境は大きく変化しています。
道路を歩く人の数だけでは、中心市街地の状態を十分に把握できなくなっています。
同じ通行人数であっても、目的地まで通過するだけの場合と、店舗や広場の前で立ち止まり、買い物や交流を楽しむ場合とでは、地域にもたらす効果が異なるためです。
そこで重要になるのが、「通行量」に加えて「滞在」を捉えるデータです。
「まちにち計画」とは
「まちにち計画」は、平和通買物公園を単に通過する道路から、人が立ち止まり、憩い、交流し、活動できる日常的な場所へ転換するための広場化実証実験です。
買物公園エリアプラットフォームと旭川市が連携し、市民や事業者が公共空間を柔軟に利用できる環境づくりを進めています。
計画では、路上で物販やパフォーマンスなどを行うバスキングエリアの導入や、ベンチなどのストリートファニチャーの設置が進められています。
こうした取り組みによって、本当に人の滞在時間が延びるのか、場所ごとの利用状況が変わるのかを確認することが、今回のAI人流解析の目的です。
AIカメラで検証する主な項目
- エリアごとの通行人数
- 時間帯による人流の変化
- 各場所での滞在傾向
- 来訪者の推定年代
- 来訪者の推定性別
- イベント開催時と通常時の違い
- ストリートファニチャー設置などによる変化
これまで感覚的に語られることの多かった「にぎわい」を定量化し、今後の空間づくりを検討するための基礎資料として活用します。
エッジAIカメラとは
エッジAIカメラとは、撮影した映像を外部のクラウドへ送って解析するのではなく、カメラや現地に設置された端末側でAI処理を行う仕組みです。
今回の実証では、カメラに映った映像を即座に人数や属性などの数値データへ変換します。
ウィルグループの発表によると、画像や動画データは保存・記録できない仕様で、個人を特定する情報も保持できないプログラムになっています。
| 項目 | 今回の実証における取り扱い |
|---|---|
| 画像・動画 | 保存・記録しない |
| 処理方法 | カメラ側で映像を数値データへ変換 |
| 取得する情報 | 通行人数、滞在傾向、推定年代、推定性別など |
| 個人の特定 | 個人を特定する情報は保持しない |
| 利用目的 | 空間施策の効果検証と中心市街地活性化の基礎資料 |
クラウド上へ映像を送信せず、統計データとして処理することにより、プライバシーに配慮しながら継続的な人流計測を行える点が特徴です。
ただし、AIが判定する年代や性別は、あくまで映像上の特徴に基づく推定値です。本人が申告した属性を取得するものではなく、判定には一定の誤差が生じる可能性があります。
「通行量」から「滞在の質」の分析へ
従来の中心市街地調査では、調査員が特定の場所に立ち、一定時間内に通過した人数を数える方法が多く用いられてきました。
この方法でも通行量は確認できますが、調査できる日時や場所が限られます。
また、人が通りを歩いているだけなのか、店舗を訪れているのか、広場やベンチで過ごしているのかといった違いを継続的に把握することは容易ではありません。
AIカメラによる自動計測を利用すれば、複数の場所で一定期間データを蓄積し、曜日、時間、イベント、天候、空間整備などによる変化を比較できます。
今回の実証で重視されているのも、人の数だけではなく、人が立ち止まり、滞在する状態を把握することです。
買物公園を「通過する場所」から「過ごす場所」へ変えるには、滞在者の増加や滞在時間の変化を確認する必要があります。
AIによって取得したデータは、広場化施策が実際の行動変化につながったかを検証する材料になります。
大型イベント開催時の人流も分析
実証期間中の旭川市中心部では、通常時とは異なる大規模な人流が発生することも見込まれています。
ウィルグループの発表では、2025年度に約93万人が来場した「あさひかわ食べマルシェ」に加え、2026年は11年ぶりとなる5連休のシルバーウィークを迎えることが紹介されています。
イベント開催期間と通常の平日・休日を比較することで、来訪者数だけでなく、人が集まりやすいエリアや滞在傾向の違いを確認できます。
例えば、イベント開催によって一時的に通行量が増えても、特定の区画を通過するだけであれば、周辺店舗や公共空間への効果は限定的かもしれません。
一方、イベントをきっかけに滞在時間が延びたり、複数のエリアへ人流が広がったりすれば、中心市街地全体への波及効果が期待できます。
こうした違いをデータで把握することにより、今後のイベント配置、休憩場所、出店場所、誘導方法などの改善につなげられます。
EBPMによるまちづくりを目指す
ウィルグループは、今回の実証を一時的な人流データの取得にとどめず、地域や企業の持続的な成長を支えるデータ活用につなげる方針です。
その柱として挙げられているのが、EBPMの定着、施策のROIの可視化、他地域への横展開です。
EBPMとは、Evidence-Based Policy Makingの略で、客観的な証拠やデータに基づいて政策を立案し、効果を検証する考え方です。
| 活用方針 | 内容 |
|---|---|
| EBPMの定着 | 時間帯やエリアごとの人流・滞在データに基づき、空間運用を検討する |
| ROIの可視化 | イベントや空間整備への投資が、滞在やにぎわいへ与えた効果を評価する |
| 施策の改善 | 分析結果を次回のイベントや空間づくりへ反映する |
| 他地域への展開 | 実証で得た分析・運用モデルを自治体や商業施設などへ展開する |
行政や地域組織が行う施策では、実施したこと自体ではなく、実施後にどのような変化が起きたかを検証することが重要です。
人流データを継続的に取得できれば、効果の大きかった施策と改善が必要な施策を比較し、次の予算配分や空間設計へ反映できます。
自治体DXで広がるAIカメラの活用
AIカメラを利用した人流解析は、中心市街地の活性化だけでなく、観光、交通、防災、施設運営など幅広い分野で活用が進んでいます。
- 観光地における混雑状況の把握
- 商店街や商業施設の来訪傾向分析
- 駅や公共施設周辺の人流計測
- イベント開催による経済効果の検証
- 災害時の避難状況や滞留の把握
- ベンチや広場など公共空間の利用状況分析
- 時間帯に応じた警備・清掃人員の最適化
一方で、カメラを公共空間へ設置する以上、取得する情報、保存期間、利用目的、第三者提供の有無などを明確にする必要があります。
技術的に個人を識別できない仕組みであっても、市民に対して、どこで何を計測し、何のために利用するのかを分かりやすく説明することが重要です。
今回の実証では、画像や動画を保存せず、個人を特定する情報を保持しない方式が示されています。
今後は、プライバシーへの配慮に加え、取得したデータが具体的にどのような施策改善へ結び付いたのかも注目されます。
実証後は全国の自治体や商業施設への展開も視野
ウィルグループは、実証を通じて得られた人流解析技術、データ、運用ノウハウを高度化し、自治体、エリアマネジメント組織、商業施設、小売店舗などへの展開を目指しています。
同社が想定しているのは、データを収集してグラフを作るだけのサービスではありません。
現場の課題を踏まえた分析レポートを提供し、次に実施する施策の策定まで支援する「伴走型」のモデルです。
中心市街地が抱える課題は地域によって異なりますが、通行量の減少、空き店舗、滞在場所の不足、イベント効果の検証など、共通する課題もあります。
旭川市で得られた知見を再現可能なモデルとして整理できれば、同様の課題を抱える全国の自治体や商店街へ展開できる可能性があります。
まとめ
北海道旭川市の平和通買物公園では、2026年8月21日から9月30日まで、エッジAIカメラを活用した人流解析の実証実験が行われます。
1条通、3条通、5条通、7条通の4エリアで、通行人数、滞在傾向、推定年代、推定性別などを連続的に計測します。
目的は、広場化実証実験「まちにち計画」によって、人の流れや滞在がどのように変化したかを客観的なデータで確認することです。
映像はカメラ上で即座に数値データへ変換され、画像や動画は保存されません。個人を特定する情報も保持できない仕組みとされています。
今回の取り組みは、中心市街地の「にぎわい」を単純な通行人数だけで判断するのではなく、人がどこで立ち止まり、どのように空間を利用したかまで分析する試みです。
AI人流解析が、イベントや公共空間整備の効果検証、EBPMに基づく政策判断、投資効果の可視化にどのように活用されるのかが注目されます。
English Summary
An AI-based pedestrian flow analysis project has begun at Heiwa Shopping Park in Asahikawa, Hokkaido.
Edge AI cameras have been installed at four locations to measure pedestrian volume, visitor dwell patterns, estimated age groups and estimated gender.
The cameras process images locally and immediately convert them into statistical data. According to Will Group, no image or video data is stored, and the system does not retain information that can identify individuals.
The project is part of the “Machinichi Plan,” an initiative designed to transform the pedestrian street from a space people simply pass through into a place where they can stop, interact and participate in local activities.
The collected data will be used to evaluate public-space initiatives and support evidence-based planning for the revitalization of Asahikawa’s city center.

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