愛知県大府市の教育メタバースが4年目へ 長期欠席児童生徒の学びと居場所を支援

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愛知県大府市は、富士ソフト株式会社の教育メタバース「FAMcampus」を活用した長期欠席児童生徒支援事業について、4年目の運用を開始しました。

学校へ行くことが難しい児童生徒に対し、自宅などから参加できるオンライン上の居場所を提供し、学習、交流、相談を支援する取り組みです。

大府市では、長期欠席傾向にある児童生徒が増加しており、学校への復帰だけを唯一の目標とするのではなく、一人ひとりの状況に応じた学びと社会参加の選択肢を整備しています。

富士ソフトによると、教育メタバースへの参加率は年々上昇し、児童生徒と保護者を対象としたアンケートでも、利用満足度や事業への評価が向上しているとしています。

一方、今回の発表では、年度ごとの参加人数、参加率、満足度などの具体的な数値は公開されていません。

そのため、「利用が定着し、評価が向上している」という方向性は確認できますが、改善幅や他の支援策との比較については、今後の詳しいデータ公開が待たれます。


大府市の教育メタバース支援が4年目に

大府市が取り組んでいるのは、長期欠席傾向にある小学生・中学生へ、オンライン上で安心して過ごせる学習・交流・相談の場を提供する事業です。

市は2023年度に「おおぶレインボープラン」を策定し、長期欠席児童生徒に対する総合的な支援体制の整備を進めてきました。

大府市が公開した令和8年度版の同プランでは、メタバースによる教育・相談支援は2023年12月から開始した事業として整理されています。

2023年度、2024年度、2025年度に続く2026年度の運用であるため、富士ソフトが発表した「4年目」という説明と整合します。

事業主体 愛知県大府市
対象 長期欠席傾向にある小学生・中学生
使用サービス 富士ソフト「FAMcampus」
支援内容 学習、交流、相談、作品展示など
開始時期 2023年12月
2026年度 4年目の運用
開放日 週2日(火曜日・木曜日)
開放時間 午前9時15分~午後0時10分
授業 1日2コマ

大府市で増加する長期欠席児童生徒

大府市が教育メタバースを活用する背景には、長期欠席児童生徒の増加があります。

富士ソフトの発表では、大府市の長期欠席傾向にある児童生徒数は、2019年からの6年間で約2倍に増加したとされています。

大府市の「おおぶレインボープラン」令和8年度版でも、小学校、中学校ともに長期欠席児童生徒が年々増加し、特に出現率は全国平均より高い状況が示されています。

2024年度の学年別人数を見ると、小学校では2年生25人、3年生21人、4年生25人、5年生31人、6年生35人、中学校では1年生66人、2年生76人、3年生64人となっています。

市は課題として、小学校の長期欠席者の増加や、同世代とのコミュニケーションに苦手意識を持つ児童生徒の存在を挙げています。

長期欠席の背景や必要とする支援は一人ひとり異なるため、教室への登校だけでなく、校内の別室、教育支援センター、民間フリースクール、オンライン授業、メタバースなど、複数の選択肢を用意することが重要になります。


全国の不登校児童生徒数は35万3,970人

長期欠席や不登校の増加は、大府市だけの課題ではありません。

文部科学省の「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2024年度の小・中学校における不登校児童生徒数は35万3,970人でした。

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区分 不登校児童生徒数
小学校 13万7,704人
中学校 21万6,266人
合計 35万3,970人

前年度の34万6,482人から増加しており、不登校児童生徒数は高い水準が続いています。

一方、新たに不登校として計上された児童生徒は15万3,828人で、前年度の16万5,300人から減少しました。

全体の人数が増える一方で、新規の不登校児童生徒数は減少しているため、継続的に学校へ通えていない児童生徒への中長期的な支援が重要になっていると考えられます。


教育メタバース「FAMcampus」とは

FAMcampusは、富士ソフトが提供する教育向けのオンライン仮想空間です。

児童生徒はアバターを操作して仮想空間へ入り、他の児童生徒や講師、支援員の存在を感じながら、授業、交流、相談などに参加できます。

一般的なWeb会議では、授業が終了すると接続も切れ、授業前後に自然に生まれる会話や質問の機会が少なくなりがちです。

FAMcampusは、仮想空間内をアバターで移動し、近くにいる人と会話したり、個別に相談したりできる環境を用意することで、オンライン授業だけでは補いにくいコミュニケーションを支援します。

FAMcampusの主な機能

  • アバターによる仮想空間への参加
  • ビデオ通話とチャット
  • Web会議システムとの連携
  • 画面・資料の共有
  • ホワイトボードを使った共同学習
  • 利用者の現在の状態を伝える「いまの気持ち」機能
  • 顔出しや声出しが苦手な児童生徒向けのビデオマスク
  • 声による参加に不安がある場合のボイスチェンジ
  • 空間ごとの開放時間設定

Chromebook、Windowsパソコン、iPadなど、GIGAスクール構想で整備された端末から利用できます。

専用のVRゴーグルを必要とせず、学校や家庭にある端末から参加できることも、自治体の教育支援で導入しやすい特徴です。


週2日、学習・交流・相談の場を提供

大府市の教育メタバースは、毎週火曜日と木曜日の午前9時15分から午後0時10分まで開放されています。

1日2コマの授業を行い、小学校1年生から中学校3年生までの教科学習を、自分のペースで進められる環境を用意しています。

教科学習だけでなく、謎解きゲームやプログラミングなど、児童生徒が参加しやすい趣味・実用系の授業も実施しています。

また、自分で制作した作品や好きなものを紹介する展示会も開催しています。

学校の授業をオンラインで再現するだけではなく、参加することへの心理的な負担を抑えながら、他者との交流や自己表現につなげる設計です。

支援内容 具体的な取り組み
教科学習 小学校1年生から中学校3年生までの内容を自分のペースで学ぶ
趣味・実用 謎解きゲーム、プログラミングなどの授業
交流 アバター、チャット、通話による児童生徒同士の交流
相談 講師や不登校支援専門員への相談
自己表現 制作物や好きなものを紹介する作品展示会

メタバースだけでは支援は成立しない

大府市の取り組みで重要なのは、仮想空間を導入しただけではない点です。

富士ソフトは、FAMcampusの仮想空間に加え、カリキュラム、講師、不登校支援専門員を組み合わせた「不登校支援パッケージ」を提供しています。

不登校支援では、システムを利用できる状態にするだけでなく、児童生徒への日々の声かけ、学習内容の準備、相談への対応、保護者や学校との連携が必要です。

構成要素 役割
メタバース 自宅などから参加できるオンライン上の居場所
カリキュラム 児童生徒が参加しやすい学習・体験プログラム
講師 授業の実施と学習のサポート
不登校支援専門員 児童生徒の状況に寄り添った相談・交流支援

教育メタバースの効果は、映像表現の豪華さやアバターの機能だけで決まるものではありません。

継続的に参加したくなるプログラムがあるか、安心して話せる支援者がいるか、児童生徒の状態に合わせて関わり方を変えられるかが重要です。


参加率と満足度が向上

富士ソフトによると、大府市の事業では児童生徒の参加率が年々上昇し、教育メタバースの活用が定着しているとしています。

児童生徒を対象とした毎年のアンケートでも、利用満足度が向上したと発表しています。

保護者へのアンケートでは、「子どもの変化を感じた」「事業を評価できる」と回答した割合が増加したとされています。

大府市教育委員会も、利用した児童生徒や保護者から前向きな声が寄せられ、長期欠席児童生徒への支援の選択肢の一つとして、一定の役割を果たしているとの認識を示しています。

ただし、今回公表された資料には、次の具体的な数値は掲載されていません。

  • 年度ごとの登録児童生徒数
  • 実際に参加した児童生徒数
  • 参加率の具体的な推移
  • 児童生徒の満足度
  • 保護者アンケートの回答数と評価割合
  • 継続利用率
  • 学校復帰や社会参加につながった人数

したがって、参加率や満足度が向上したという評価は、現時点では富士ソフトと大府市による発表に基づくものです。

事業の効果をより客観的に判断するには、利用者数だけでなく、参加頻度、継続期間、心理面の変化、相談支援への接続状況などを含む詳しい検証が必要です。


「学校復帰」だけを目的にしない支援

大府市は、教育メタバースの目的として、より確かな学びの機会と安心できる居場所の提供、相談体制の充実、児童生徒の自立と社会参加を挙げています。

これは、教育メタバースを学校へ戻すためだけの訓練場所として位置付けていないことを示しています。

学校へ行けない状態であっても、学習を続けること、信頼できる大人と相談すること、同世代の存在を感じること、自分の作品を誰かに見てもらうことには意味があります。

児童生徒によっては、アバターであっても他者と接することに負担を感じる場合があります。

そのため、参加を強制せず、カメラや音声の使用、交流の範囲、学習の進め方などを本人の状態に応じて選べる設計が求められます。


「おおぶレインボープラン」の7つの支援

教育メタバースは、大府市が進める長期欠席児童生徒支援の一部です。

「おおぶレインボープラン」では、支援を7つの分野に整理しています。

  1. 学校内における居場所の充実
  2. 学校外における居場所の充実
  3. ICTを活用した相談支援・居場所の充実
  4. 相談支援体制の充実
  5. 地域における活動との連携
  6. 関係機関との連携・情報交換・研究
  7. 長期欠席への理解の促進

具体策には、全小中学校への校内教育支援室と支援員の配置、教育支援センター「レインボーハウス」、民間フリースクールなどの授業料補助、タブレットを使った授業参加、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーによる相談支援などがあります。

教育メタバースは、こうした対面・校内・校外の支援と組み合わせて運用されています。

オンライン支援だけですべての課題を解決するのではなく、児童生徒が利用できる複数の入口の一つとして位置付けられている点が重要です。


自治体が教育メタバースを導入する際の課題

教育メタバースは、外出や対面交流が難しい児童生徒にも支援を届けられる可能性があります。

一方、自治体が継続運用するには、技術面だけでなく教育・福祉面を含む体制整備が必要です。

導入・運用で確認すべき項目

  • 対象となる児童生徒と利用条件
  • 本人や保護者への説明と同意
  • アカウントと個人情報の管理
  • チャットや通話記録の保存範囲
  • 仮想空間内のトラブルへの対応
  • 支援員、講師、相談員の確保
  • 学校、家庭、教育支援センターとの情報共有
  • 利用しない児童生徒への別の選択肢
  • 参加人数だけに依存しない効果測定
  • 年度終了後も継続できる予算と運営体制

特に注意すべきなのは、メタバースへ参加できない児童生徒を新たに取り残さないことです。

デジタル機器の操作に不安がある、他人のアバターを見ることにも緊張する、決まった時間に参加することが難しいなど、利用できない理由はさまざまです。

メタバースを新たな選択肢として増やしながら、電話、訪問、対面相談、校内別室、フリースクールなど既存の支援も維持する必要があります。


FAMcampusは自治体26団体に導入

FAMcampusは2023年にサービス提供を開始しました。

公式サイトでは、2026年時点の導入実績として、教育機関40団体、自治体26団体を掲載しています。

大府市以外にも、さいたま市、名古屋市、奈良県、大阪府貝塚市などで、不登校児童生徒への学習・交流支援に活用されています。

不登校支援に教育メタバースを利用する動きは、単年度の実証から継続運用へ移りつつあります。

大府市で4年目の運用が始まったことも、教育メタバースが短期間の技術実証ではなく、自治体の支援メニューとして定着できるかを検証する事例として注目されます。


まとめ

愛知県大府市は、富士ソフトの教育メタバース「FAMcampus」を活用した長期欠席児童生徒支援事業について、4年目の運用を開始しました。

教育メタバースは週2日開放され、小学校1年生から中学校3年生までの教科学習、謎解きやプログラミングなどの授業、交流、相談、作品展示などを行っています。

富士ソフトによると、児童生徒の参加率と利用満足度は年々向上し、保護者からも子どもの変化や事業を評価する回答が増えています。

ただし、参加率や満足度の具体的な数値は公表されていないため、効果の大きさを客観的に比較できる段階ではありません。

大府市では、教育メタバースを単独で運用するのではなく、校内教育支援室、教育支援センター、相談支援、フリースクールへの補助などを含む「おおぶレインボープラン」の一つとして位置付けています。

教育メタバースの価値は、学校を仮想空間に再現することだけではありません。

学校や対面の支援につながりにくい児童生徒へ、学習、交流、相談、社会参加につながる新たな入口を用意する点にあります。

4年間の継続運用によって、どのような児童生徒に効果があったのか、参加や相談がどのような変化につながったのか、今後さらに詳しい検証結果が公開されることが期待されます。


English Summary

Obu City in Aichi Prefecture has begun the fourth year of a support program for students experiencing long-term school absence using Fujisoft’s educational metaverse platform, FAMcampus.

The virtual space is open twice a week and provides academic lessons, practical activities, communication opportunities, exhibitions and access to consultation support.

Students can participate from home using an avatar, allowing those who find school attendance or face-to-face communication difficult to maintain access to learning and social connections.

According to Fujisoft, participation and user satisfaction have increased over the years. Parent surveys have also shown an increase in responses indicating positive changes in their children and support for the program.

However, specific annual figures for participation, satisfaction and continued use were not disclosed in the announcement.

The metaverse program is one component of Obu City’s broader Rainbow Plan, which also includes in-school support rooms, education support centers, counseling, online classes and assistance for private free schools.

The initiative illustrates how educational metaverse services are moving beyond short-term demonstrations and becoming one of several continuing support options available to local governments.


よくある質問

FAMcampusを利用するにはVRゴーグルが必要ですか?

専用のVRゴーグルは必要ありません。Chromebook、Windowsパソコン、iPadなど、GIGAスクール構想で整備された端末から利用できます。

教育メタバースへの参加は学校への出席として扱われますか?

オンライン学習の出席扱いは、文部科学省の通知や各学校・教育委員会の判断に基づきます。メタバースを利用しただけで一律に出席扱いになるわけではありません。

大府市の事業は学校復帰だけを目的にしていますか?

学校復帰だけではありません。学びの機会、安心できる居場所、相談体制を提供し、児童生徒の自立と社会参加を支援することを目的としています。

参加率と満足度はどの程度向上しましたか?

富士ソフトは参加率と満足度が年々向上したと発表していますが、具体的な割合や回答者数は今回の発表では公開されていません。


参考・出典

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