

生成AIの行政利用が、一つの自治体による単独導入から、複数自治体による広域連携へ進み始めています。
香川県の中讃広域圏を構成する丸亀市、善通寺市、琴平町、多度津町、まんのう町と中讃広域行政事務組合は、2026年7月31日、Polimill株式会社と「生成AIの利活用による中讃広域圏DX推進に関する連携協定」を締結しました。
行政向け生成AI「QommonsAI」を活用し、職員の生成AI活用能力の向上、中讃地域が抱える課題の解決、自治体実務に即した専用AIの共同開発、広域圏全体のDX推進に取り組みます。
今回の特徴は、一つの市や町が個別に生成AIを導入するのではなく、2市3町と広域行政事務組合が同時に協定へ参加したことです。
人材、予算、ノウハウの確保が難しい小規模自治体にとって、複数自治体で研修や活用事例、業務課題を共有する広域連携は、生成AIを継続的に利用するための有力なモデルになる可能性があります。
中讃広域圏の2市3町がPolimillと連携
連携協定へ参加したのは、中讃広域行政事務組合と、その構成自治体である次の2市3町です。
- 丸亀市
- 善通寺市
- 琴平町
- 多度津町
- まんのう町
これらの自治体と中讃広域行政事務組合、Polimillが、広域圏全体で生成AIの利活用とDXを進めます。
| 協定名 | 生成AIの利活用による中讃広域圏DX推進に関する連携協定 |
|---|---|
| 締結日 | 2026年7月31日 |
| 締結場所 | 中讃広域行政事務組合 |
| 参加自治体 | 丸亀市、善通寺市、琴平町、多度津町、まんのう町 |
| 広域組織 | 中讃広域行政事務組合 |
| 連携企業 | Polimill株式会社 |
| 活用する生成AI | 行政向け生成AI「QommonsAI」 |
| 第一弾の取り組み | 中讃広域圏の市町職員を対象とする合宿型生成AI活用研修 |
中讃広域行政事務組合によると、Polimillが四国地方の自治体と連携協定を結ぶのは今回が初めてです。
複数の自治体が広域行政事務組合とともに、同時に生成AIの連携協定を締結する取り組みは、全国的にも珍しい広域DXモデルとされています。
中讃広域圏とは
中讃広域圏は、香川県中部に位置する丸亀市、善通寺市、琴平町、多度津町、まんのう町によって構成されています。
中讃広域行政事務組合は、構成市町が単独で行うよりも、広域的に処理することが適している行政事務を共同で進める組織です。
生成AIに関する今回の協定も、既存の広域行政の枠組みをDXとAI活用へ広げる取り組みとして位置付けられます。
中讃広域圏は2024年8月、住民と職員一人ひとりの幸福度向上を目指し、「人が主役のDX推進」を掲げる協働宣言を発表しました。
今回の連携協定は、この協働宣言を具体的な施策へ移すものです。
協定で進める四つの取り組み
2市3町、中讃広域行政事務組合、Polimillは、主に四つの分野で連携します。
1.職員の能力・実践力の向上
生成AIの基本操作を学ぶだけでなく、実際の行政業務で使いこなすための能力を育成します。
職員の意識改革も含め、生成AIを業務改善や政策立案へ利用できる状態を目指します。
2.中讃地域が抱える課題の解決
中讃エリアに特有の行政課題や地域課題を整理し、生成AIをどの業務へ適用できるか検討します。
一般的な文書作成だけでなく、地域の実情に即した実践的な利用方法を探ります。
3.自治体実務に即した専用AIの共同開発
Polimillと現場職員が意見交換を重ね、自治体実務に対応する専用AIの共同開発に取り組みます。
既製の生成AIサービスをそのまま使用するだけではなく、現場の課題や職員からの意見を機能開発へ反映する方針です。
4.広域圏全体のDX推進
生成AIに限定せず、中讃広域圏全体のデジタルトランスフォーメーションを加速させる活動を共同で進めます。
| 連携分野 | 主な内容 |
|---|---|
| 職員育成 | 生成AIのスキル習得、実践力と意識の向上 |
| 地域課題解決 | 中讃地域の課題に適したAI活用方法の検討 |
| 専用AI開発 | 現場職員とPolimillによる実務向けAIの共同開発 |
| 広域DX | 2市3町と組合が連携したDX施策の推進 |
行政向け生成AI「QommonsAI」とは
今回の連携では、Polimillが開発・提供する行政向け生成AI「QommonsAI」が活用されます。
QommonsAIは、国内外の法律、政策、論文、自治体事例など数千万件以上のデータを基盤として、自治体の政策立案や行政実務を支援するサービスです。
Polimillの発表では、2026年7月時点で全国約1,000自治体、約50万人が利用しているとされています。
自治体業務では、一般的な生成AIの知識だけでなく、法律、政策、自治体事例などの根拠情報が重要になります。
QommonsAIは、こうした行政情報を利用し、エビデンスに基づいた業務支援を行うことを特徴としています。
想定される行政業務での利用例
- 議会答弁の作成支援
- 政策立案に必要な情報収集
- 住民向け告知文の作成
- 法令や条例の確認
- 他自治体の先進事例の検索
- 固定資産税に関する照合作業
- 人事・採用面接の支援
- 広報資料や説明文の作成
ただし、これらは協定締結後の講演や意見交換会で示された活用案を含みます。
すべての業務で利用開始が決定しているという意味ではなく、今後、対象業務や運用方法を検討していく段階です。
なぜ自治体単独ではなく広域連携なのか
生成AIを自治体業務へ導入するためには、サービスを契約するだけでなく、職員研修、利用ルール、情報セキュリティ、対象業務の選定、効果検証などが必要です。
専門人材や予算が限られる自治体では、これらを単独で進めることが負担になる場合があります。
単独導入で生じやすい課題
- AIやDXを担当できる職員が少ない
- 研修の企画や講師の確保が難しい
- 利用ガイドラインを一から作成する必要がある
- どの業務へ導入すれば効果が出るか判断しにくい
- 実証や効果測定に必要な予算を確保しにくい
- 他自治体の活用事例や失敗事例を入手しにくい
- 異動によって担当者の知識が失われやすい
複数自治体が連携すれば、職員研修、活用事例、課題、運用ノウハウを共有できます。
ある自治体で有効だった使い方を、条件が近い別の自治体へ展開することも可能になります。
広域行政事務組合が調整役となれば、自治体ごとに個別の事業者と協議するよりも、地域全体で方針をそろえやすくなります。
広域AIモデルで共有できるもの
広域連携の利点は、生成AIのアカウントやシステムを共有することだけではありません。
実際には、次のような人材、知識、ルール、活用方法の共有が重要になります。
| 共有できるもの | 期待される効果 |
|---|---|
| 職員研修 | 研修企画や講師確保の負担を軽減 |
| 活用事例 | 効果が確認された利用方法を他市町へ展開 |
| プロンプト | 行政文書作成などに使える質問形式を共有 |
| 利用ルール | 入力禁止情報や職員確認の基準をそろえる |
| 評価方法 | 削減時間や回答品質を共通指標で検証 |
| 業務課題 | 複数自治体に共通する課題を把握 |
| 職員の知見 | 異動があっても地域内でノウハウを維持 |
| 専用AIの機能要件 | 複数自治体の実務に使える機能を共同検討 |
自治体ごとに組織規模や業務手順が異なるため、すべてを完全に共通化できるわけではありません。
共通する業務と自治体固有の業務を分け、広域で共有する部分を見極める必要があります。
第一弾は合宿型の生成AI活用研修
協定に基づく最初の具体的な取り組みとして、2026年秋ごろに、中讃広域圏の市町職員を対象とした合宿型の生成AI活用研修が予定されています。
単に生成AIの操作方法を学ぶ座学ではなく、現場の職員が中讃地域の課題を持ち寄り、生成AIをどのように利用できるかを考える実践的な研修です。
複数自治体の職員が同じ研修へ参加することで、それぞれの自治体が抱える課題や業務方法を比較できます。
一つの自治体では気付かなかった改善方法を、他市町の事例から発見できる可能性もあります。
広域研修で重要になるポイント
- 実際の行政業務を題材にすること
- 生成AIを使うこと自体を目的にしないこと
- 業務時間や作業量の削減効果を測定すること
- 誤回答やハルシネーションを確認すること
- 個人情報や機密情報の取り扱いを統一すること
- 研修後も職員同士で事例を共有できること
- 効果の高い事例を他の市町へ展開すること
研修を一度実施して終わるのではなく、実務での利用結果を共有し、専用AIの開発や広域DXへ反映できるかが重要です。
専用AIの共同開発とは
協定には、自治体実務に即した「専用AI」の共同開発が盛り込まれています。
これは、一般的な生成AIを職員へ配布するだけでなく、現場職員の意見や業務上の課題を基に、行政実務で利用できる機能をPolimillと共同で検討する取り組みです。
例えば、複数自治体に共通する業務を整理できれば、その業務に特化した支援機能を広域圏全体で利用できる可能性があります。
共同開発で想定される流れ
- 各市町の職員が業務課題を持ち寄る
- 複数自治体に共通する課題を整理する
- 生成AIを適用できる業務を選定する
- Polimillと職員が必要な機能を検討する
- 試作した機能を実務で検証する
- 職員の評価を基に改善する
- 効果が確認された機能を他の市町へ展開する
ただし、現時点では専用AIの具体的な機能、開発期間、提供開始日などは公表されていません。
専用AIは完成済みのシステムではなく、今後、現場との意見交換を通じて開発を進める計画です。
「共同活用」と「共同調達」は分けて考える必要
今回の協定は、2市3町と中讃広域行政事務組合が同時に生成AIの活用へ取り組む広域連携モデルです。
一方、公式発表では、システムの契約方法や費用負担について、詳細は示されていません。
そのため、現時点で次の事項が確定したと判断することはできません。
- 2市3町が一つの契約でQommonsAIを共同調達すること
- 導入費や利用料を市町間で共同負担すること
- すべての職員が同じ時期に利用を開始すること
- 各自治体の内部データを相互に共有すること
- 広域共通のAIシステムがすでに完成していること
今回確定しているのは、生成AIの利活用について2市3町と組合が協力し、職員育成、地域課題の解決、専用AIの共同開発、広域DXを進めることです。
今後、共同調達や共通システムの運用へ発展するかは、具体的な事業設計や予算措置を確認する必要があります。
広域連携でも自治体ごとの情報管理は必要
複数自治体が生成AIを共同で活用する場合でも、すべての情報を自治体間で自由に共有できるわけではありません。
住民情報、税務情報、福祉情報、人事情報などには、厳格なアクセス制御が必要です。
広域AIモデルを安全に運用するためには、共通利用する情報と、自治体ごとに分離する情報を明確にしなければなりません。
広域利用で必要になる管理
- 自治体ごとの利用者認証
- 所属や役職に応じたアクセス権限
- 自治体間で共有できる情報の範囲
- 個人情報や機密情報の入力制限
- 入力・出力履歴の保存と監査
- AIの回答を職員が確認する運用
- 誤情報や情報漏えいが発生した場合の責任分担
- 契約終了時のデータ削除と移行方法
共同利用によって効率化を進める一方、自治体ごとの情報を適切に分離する技術と運用が必要です。
小規模自治体に広域AIが有効な理由
人口規模の小さい自治体では、AIやDXを専門に担当する職員を配置することが難しい場合があります。
また、新しいシステムを導入しても、担当者の異動によって活用方法が引き継がれず、利用が定着しない可能性があります。
広域行政事務組合を中心に複数自治体が連携すれば、特定の担当者だけに知識を集中させず、地域全体でノウハウを維持できます。
| 単独導入 | 広域連携 |
|---|---|
| 自治体ごとに研修を企画 | 複数自治体で合同研修を実施 |
| 導入事例が庁内に限定される | 市町間で事例を共有できる |
| 担当者の異動で知識が失われやすい | 地域全体でノウハウを維持しやすい |
| 一自治体の課題だけで機能を検討 | 複数自治体の共通課題から機能を設計 |
| 効果検証の対象が限られる | 異なる自治体で比較検証できる |
| 事業者との交渉を個別に実施 | 広域組織が調整役を担える |
特に、人口減少や職員不足が進む地域では、自治体ごとに同じ仕組みを重複して構築するよりも、共通化できる業務を広域で支える考え方が重要になります。
広域AIモデルが成功するための条件
複数自治体が協定を結ぶだけで、生成AI活用が自動的に進むわけではありません。
広域連携を実務へ定着させるためには、共通の目標、責任分担、評価方法を具体化する必要があります。
今後確認したいポイント
- 各市町でQommonsAIをどの範囲まで利用するか
- 共同研修後にどの業務で実証するか
- 専用AIがどの業務を対象にするか
- 共通化するデータと自治体固有データの区分
- 導入費用や運用費用をどのように負担するか
- 広域圏全体の運用責任者を誰が担うか
- 生成AIの回答を誰が確認するか
- 業務時間や行政サービスへの効果をどう測定するか
- 情報セキュリティ事故が発生した場合の対応
- 成果を他の広域圏へ展開できるか
特に、研修で得た知識を各市町の実務へ持ち帰り、継続的な業務改善へつなげられるかが重要です。
自治体AIは「各庁導入」から「地域共同基盤」へ進むか
これまでの自治体生成AIは、一つの自治体がサービスを契約し、庁内の職員へ展開する方式が中心でした。
中讃広域圏の取り組みは、自治体の境界を越えて人材育成、課題整理、機能開発を進める点に特徴があります。
今後、同様のモデルが全国へ広がれば、生成AIの導入単位が「一つの自治体」から「生活圏や広域行政圏」へ変化する可能性があります。
特に、消防、ごみ処理、介護認定、観光、公共交通、防災など、すでに自治体間で連携している分野では、生成AIやAIエージェントも広域で開発・運用する考え方が現実的になります。
一方で、自治体ごとに条例、業務手順、情報管理方針が異なるため、単純に一つのAIを全自治体へ適用できるとは限りません。
共通化による効率性と、自治体ごとの独自性を両立できる設計が求められます。
まとめ
香川県の中讃広域圏を構成する丸亀市、善通寺市、琴平町、多度津町、まんのう町と中讃広域行政事務組合は、2026年7月31日、Polimillと生成AI利活用に関する連携協定を締結しました。
行政向け生成AI「QommonsAI」を活用し、職員の能力・実践力向上、中讃地域の課題解決、専用AIの共同開発、広域DXの推進に取り組みます。
第一弾として、2026年秋ごろに中讃広域圏の市町職員を対象とした合宿型生成AI活用研修が予定されています。
今回の特徴は、一つの自治体が単独でAIを導入するのではなく、2市3町と広域行政事務組合が同時に連携したことです。
複数自治体で研修、活用事例、業務課題、専用AIの機能要件を共有できれば、人材やノウハウが限られる小規模自治体でも、生成AIを継続的に活用しやすくなる可能性があります。
ただし、現時点で公表されているのは連携協定と今後の取り組み方針です。
2市3町によるシステムの共同調達、費用の共同負担、内部データの相互共有まで決定したとは発表されていません。
中讃広域圏の取り組みが、協定や研修にとどまらず、共通業務の効率化や住民サービスの向上へ結び付くか。自治体AIが単独導入から広域連携へ進むモデルケースとして、今後の具体的な実装が注目されます。
English Summary
Two cities, three towns and an intermunicipal administrative union in Kagawa Prefecture’s Chusan region signed a cooperation agreement with Polimill on July 31, 2026, to promote the use of generative AI and regional digital transformation.
The participating municipalities are Marugame City, Zentsuji City, Kotohira Town, Tadotsu Town and Manno Town. The Chusan Regional Administrative Union is also a party to the agreement.
The partnership focuses on four areas: improving municipal employees’ practical AI skills, solving regional challenges, jointly developing AI specialized for municipal work and accelerating digital transformation across the region.
Polimill’s administrative generative AI service, QommonsAI, will support the initiative. The first planned activity is an intensive AI training program for municipal employees in the region.
The initiative is notable because multiple municipalities are working with an intermunicipal organization under a single regional framework. This approach could help smaller municipalities share training, expertise, use cases and development resources.
However, the published agreement does not confirm joint procurement, shared payment of service costs or mutual access to internal municipal data. These operational details will need to be clarified as the project develops.

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