

大分市は2026年10月1日、デジタル庁が開発・公開したオープンソースソフトウェア「源内」を活用する生成AIサービス「Oita GENAI」の運用を開始しました。
行政専用ネットワーク「LGWAN」から利用でき、市の例規・要綱、過去の議会答弁、庁内マニュアルなどを生成AIが検索・参照するRAG機能を備えています。
大分市によると、デジタル庁の「源内」を活用した生成AIサービスをLGWAN環境で導入するのは、中核市で初めてです。
中央省庁向けに開発された国の生成AI基盤が、オープンソース化を通じて地方自治体の実務へ展開される重要な事例となります。
大分市が「Oita GENAI」の運用を開始
「Oita GENAI」は、デジタル庁が2026年4月にオープンソースソフトウェアとして一般公開した「源内」を基に、大分市の行政環境へ対応させた生成AIサービスです。
| サービス名 | Oita GENAI(おおいた げんない) |
|---|---|
| 稼働開始日 | 2026年10月1日 |
| 導入自治体 | 大分県大分市 |
| 基盤ソフトウェア | デジタル庁のOSS「源内」 |
| 利用環境 | LGWAN(行政専用ネットワーク) |
| データセンター | 国内データセンター(さくらクラウド) |
| 主な機能 | 対話型生成AI、RAG、構造化データベース、文字起こし、翻訳、画像・スライド作成、データ分析、コード生成など |
| 提供事業者 | 川口弘行合同会社 |
提供事業者は、2026年8月に実施された「大分市生成AIサービス提供業務」の公募型プロポーザルによって選定されました。
オープンソースとして公開された「源内」をそのまま設置するだけではなく、LGWANへの対応、自治体独自データの登録、RAG環境の構築などを行い、大分市の業務で利用できるサービスとして実装しています。
デジタル庁の「源内」とは
「源内」は、政府職員が安全に生成AIを利用するため、デジタル庁が内製開発した生成AI利用環境です。
対話型チャット、文章作成、要約、校正、翻訳などの汎用機能に加え、国会答弁の検索や法制度の調査など、行政実務に特化したAIアプリケーションが提供されています。
デジタル庁は2026年度中に、全府省庁の政府職員約18万人が「源内」を利用できる環境を整備する計画です。
2026年4月24日には、「源内」の一部をオープンソースソフトウェアとして一般公開しました。
ソースコードを公開することで、自治体や民間事業者が、それぞれのネットワーク環境や業務課題に合わせて改良し、独自の生成AIサービスを構築できるようになります。
| 名称 | 役割 |
|---|---|
| ガバメントAI | 政府職員が安全・安心にAIを利用するための共通基盤 |
| 源内 | デジタル庁が開発した生成AI利用環境 |
| 源内OSS | 自治体や事業者が利用・改良できるよう公開されたソフトウェア |
| Oita GENAI | 源内OSSを基に、大分市のLGWAN環境と行政業務へ対応させたサービス |
したがって、大分市の職員が中央省庁で運用されている「源内」へそのまま接続するわけではありません。
デジタル庁が公開したソフトウェアを基に、大分市専用の生成AI環境を構築したものです。
行政専用ネットワーク「LGWAN」で利用
自治体が生成AIを業務で利用する場合、一般的なインターネット上のAIサービスへ行政情報を入力することには慎重な対応が必要です。
「Oita GENAI」は、自治体を結ぶ行政専用ネットワーク「LGWAN」で利用できるように構築されています。
システムは国内のデータセンターで管理され、大分市は厳格な管理のもとで高いセキュリティを確保した環境として運用すると説明しています。
行政職員が日常的な業務で生成AIを利用するためには、性能だけでなく、次のような条件が必要です。
- 行政専用ネットワークから利用できること
- 入力情報や生成結果を適切に管理できること
- 利用者の認証とアクセス権限を設定できること
- 操作履歴や利用状況を確認できること
- 機密性に応じて入力できる情報を管理すること
- 国内法令や自治体の情報セキュリティ方針に対応すること
Oita GENAIは、一般的な生成AIサービスを職員が個別に利用するのではなく、自治体の管理下にある共通環境として導入される点が特徴です。
例規・議会答弁・マニュアルをRAGで参照
Oita GENAIの中核となる機能が、大分市独自の行政情報を検索・参照するRAGです。
RAGは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、日本語では「検索拡張生成」と呼ばれます。
利用者から質問を受けると、あらかじめ登録された文書から関連情報を検索し、その内容を生成AIへ渡して回答作成を支援します。
大分市が参照対象として挙げている主な情報は次のとおりです。
- 大分市の例規
- 要綱などの行政文書
- 過去の市議会答弁
- 庁内業務マニュアル
- 大分市公式ホームページの情報
市のホームページについては、URLの指定や自動更新によって、最新の市政情報を検索・参照する利用方法も想定されています。
一般的な生成AIは、大分市独自の制度や過去の行政判断を詳しく把握しているとは限りません。
RAGによって市の保有情報を参照できれば、一般論だけではなく、大分市の例規や過去の答弁を踏まえた回答案を作成しやすくなります。
行政情報を整理する構造化データベース
Oita GENAIは、RAGに加えて「構造化データベース」を備えています。
これは、例規、議会答弁、マニュアルなどの行政情報を、生成AIが検索・参照しやすいように整理・分類して蓄積する仕組みです。
生成AIを導入しても、参照する文書が古い、分類が統一されていない、同じ内容の文書が複数存在するといった状態では、適切な回答を作成できません。
自治体におけるAI導入では、AIモデルの性能だけでなく、次のようなデータ整備が重要になります。
- 最新の文書を登録する
- 廃止・改定された文書を整理する
- 文書の所管部署を明確にする
- 公開情報と内部情報を区分する
- 参照権限を適切に設定する
- 回答に使用した文書を確認できるようにする
- 誤った情報が見つかった場合に修正する
Oita GENAIは、生成AIの利用画面を用意するだけでなく、行政が保有する知識をAIで利用できる状態へ整理する取り組みでもあります。
文章作成からEBPMまで幅広く活用
大分市は、Oita GENAIを幅広い行政業務で利用することを想定しています。
| 利用分野 | 想定される内容 |
|---|---|
| 文章作成 | 例規や要綱を参照した通知文、説明文、回答案などの作成 |
| 議会答弁支援 | 過去の議会答弁を検索し、新しい答弁案の作成を補助 |
| 庁内問い合わせ | 業務マニュアルを参照し、職員からの質問への回答を支援 |
| 文字起こし | 会議などの音声をテキスト化 |
| 翻訳 | 行政情報や案内文の多言語化 |
| 画像生成 | 資料や広報に使用する画像案の作成 |
| スライド作成 | 構成案やたたき台の作成からファイル出力までを支援 |
| アンケート分析 | 集計と自由記述欄の傾向分析 |
| EBPM | 複数のデータを読み込み、根拠に基づく政策立案を補助 |
| コード生成 | 業務自動化に向けたプログラム作成を補助 |
特に注目されるのが、過去の議会答弁や庁内マニュアルを参照できる点です。
行政機関には、長年の業務によって蓄積された文書や判断の記録があります。しかし、それらが複数の部署やシステムに分散している場合、必要な情報を探すだけで時間がかかります。
生成AIを行政情報の検索窓口として利用できれば、職員が文書を探す時間を短縮し、確認や判断に時間を充てられる可能性があります。
議会答弁作成はAIへの丸投げではない
Oita GENAIでは、過去の議会答弁を利用した答弁作成の補助が想定されています。
ただし、生成AIが市の方針や政策判断を決定するわけではありません。
過去の答弁を検索して論点を整理し、文章案を作成することはできますが、現在の制度、最新のデータ、市長や担当部署の方針と一致しているかは職員が確認する必要があります。
特に、議会答弁では次の確認が欠かせません。
- 過去の答弁から方針が変更されていないか
- 引用した数字や制度が最新か
- 質問に対して適切に回答しているか
- 他部署の所管事項と矛盾していないか
- 市の公式見解として公表できる内容か
- 回答の根拠となる資料を確認できるか
AIは答弁作成を支援できますが、最終的な内容に責任を持つのは大分市です。
RAGでも誤回答を完全には防げない
大分市は、RAGによって市独自の情報を踏まえた高精度な回答を生成し、生成AIによる事実と異なる回答への対策につなげると説明しています。
ただし、RAGを導入してもハルシネーションを完全になくせるわけではありません。
次のような場合には、誤った回答や不十分な回答が生成される可能性があります。
- 参照データが古い
- 必要な文書が登録されていない
- 検索で適切な部分を取得できなかった
- 複数の文書に矛盾する記載がある
- 生成AIが参照内容を誤って解釈した
- 質問の意図を正しく認識できなかった
そのため、行政業務で利用する場合には、回答の出典を確認し、担当職員が内容を検証する運用が必要です。
特に、市民の権利、給付、税、福祉、許認可などに影響する業務では、AIの回答だけで最終判断を行わないことが重要です。
「中核市初」の範囲を正確に確認
大分市は、Oita GENAIについて「中核市で初めて導入」と発表しています。
ただし、全国の中核市で初めて生成AIを導入したという意味ではありません。
すでに多くの自治体が、民間の生成AIサービスや独自の行政向けAI環境を導入しています。
今回の「中核市初」は、デジタル庁が公開したOSS「源内」を活用し、LGWAN環境で利用できる生成AIサービスを導入する事例を指します。
| 表現 | 評価 |
|---|---|
| 「源内」を活用したLGWAN対応サービスを中核市で初導入 | 大分市の発表に沿った表現 |
| 大分市が中核市で初めて生成AIを導入 | 不正確 |
| デジタル庁の中央省庁向け環境を大分市が直接利用 | 不正確 |
| 源内OSSを基に大分市向けサービスを構築 | 適切 |
提供事業者の川口弘行合同会社は、LGWAN上で稼働する「源内」派生サービスとして、初めての導入事例と説明しています。
記事では、大分市の公式発表に基づき「中核市初」とするのが適切です。
国が作ったAI基盤を地方へ横展開
今回の導入が重要なのは、一つの自治体が新しい生成AIサービスを採用したことだけではありません。
国が開発した生成AI基盤をオープンソースとして公開し、地方自治体や民間事業者が地域の環境に合わせて実装する流れが、具体的な運用段階へ入ったことです。
自治体ごとに生成AI環境を一から設計すると、調達、セキュリティ確認、開発、職員教育などに多くの時間と費用が必要です。
共通基盤として「源内」を利用できれば、基本的な機能や設計思想を共有しながら、自治体固有のデータや業務だけを追加できる可能性があります。
国のAI基盤を地方へ横展開することで、次の効果が期待されます。
- 自治体ごとの開発負担を軽減する
- 行政向けAIの知見を共有する
- 成功したAIアプリを他自治体へ展開する
- セキュリティや運用ルールを標準化する
- 小規模自治体でも生成AIを導入しやすくする
- 自治体間で共通する業務を効率化する
大分市の運用実績は、他の中核市、政令指定都市、一般市町村が「源内」を採用するか判断する際の参考事例になります。
OSSだから無料で導入できるわけではない
「源内」はオープンソースとして公開されていますが、自治体が費用をかけずに利用できるという意味ではありません。
ソフトウェアの基盤を利用できても、実際の運用には次のような作業が必要です。
- LGWAN環境への対応
- サーバーやクラウド環境の構築
- 自治体データの収集・整理
- RAGデータベースの構築
- アクセス権限の設定
- セキュリティ対策
- 職員研修と利用支援
- 運用開始後の保守
- データ更新と品質管理
大分市も、公募型プロポーザルによって提供事業者を選定し、自治体向けサービスとして構築しています。
OSSは導入の出発点を共通化できますが、行政実務で安全に利用するための構築・運用費用は別途必要です。
今後は利用実績と効果の検証が重要
Oita GENAIの運用開始後は、導入した機能の多さだけでなく、実際に職員の業務が改善したかを確認する必要があります。
効果検証では、次のような指標が考えられます。
- 利用した職員数と部署数
- 文章作成や情報検索にかかる時間の変化
- 議会答弁作成の作業時間
- 文字起こしや翻訳にかかる時間
- 職員による回答修正の割合
- 誤回答や参照ミスの発生件数
- RAGへ登録された文書の更新状況
- 職員研修の実施状況
- 行政サービスの品質向上
- 導入・運用費用に対する効果
利用回数が多いだけでは、行政DXの成果とはいえません。
職員の作業時間が減ったのか、判断の質が向上したのか、市民サービスの改善につながったのかを継続的に評価することが重要です。
まとめ
大分市は2026年10月1日、デジタル庁が開発・公開したオープンソースソフトウェア「源内」を活用する生成AIサービス「Oita GENAI」の運用を開始しました。
LGWANから利用でき、国内データセンターで管理される行政向けの生成AI環境です。
大分市の例規・要綱、過去の議会答弁、庁内マニュアル、市公式ホームページなどをRAGで検索・参照し、行政実務に沿った回答作成を支援します。
文章作成、議会答弁支援、文字起こし、翻訳、画像・スライド作成、アンケート分析、EBPM、プログラム作成など、幅広い業務での利用が想定されています。
「中核市初」とされているのは、一般的な生成AIの導入ではなく、「源内」を活用した生成AIサービスをLGWAN環境で導入する事例です。
また、Oita GENAIは中央省庁向けの「源内」をそのまま利用するものではなく、公開されたOSSを基に大分市向けに構築したサービスです。
今回の導入は、国が開発したAI基盤をオープンソース化し、地方自治体の行政データやネットワーク環境に合わせて横展開する流れを示しています。
今後、大分市での利用効果や課題が共有されれば、「源内」を基盤とする自治体向け生成AIが全国へ広がる可能性があります。
English Summary
Oita City launched “Oita GENAI,” a municipal generative AI service based on the Digital Agency of Japan’s open-source Gennai platform, on October 1, 2026.
The service operates through LGWAN, Japan’s administrative network for local governments, and is managed in a domestic data center.
Its retrieval-augmented generation functions can search and reference Oita City’s regulations, administrative guidelines, past city council responses, internal manuals and information published on the municipal website.
Planned uses include document drafting, support for city council responses, transcription, translation, image and presentation creation, survey analysis, evidence-based policymaking and programming assistance.
According to Oita City, this is the first case among Japan’s core cities to introduce an LGWAN-based generative AI service using the Digital Agency’s open-source Gennai software.
Oita GENAI is not a direct connection to the central government’s operational Gennai environment. It is a separate municipal service built from the publicly released source code and adapted to Oita City’s network, data and administrative requirements.
The project represents an important step toward expanding a government-developed AI foundation from central ministries to local governments.

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