

大阪府河内長野市とPolimill株式会社は、2026年8月24日、「生成AIの利活用等に係る連携協定」を締結しました。
河内長野市の職員が行政向け生成AI「QommonsAI」を実務で使用し、行政現場で得た知見や改善意見をPolimillへ提供します。
Polimillは、市職員から寄せられたフィードバックをQommonsAIの機能開発や設計へ反映し、行政実務に適したサービスへ継続的に改良します。
自治体が完成したAIサービスを導入するだけではなく、行政現場の利用者が開発パートナーとして生成AIの改善に参加する「共創型」の取り組みです。
河内長野市とPolimillが生成AI連携協定
今回の協定は、河内長野市における生成AI活用の深化と、Polimillが開発・提供するQommonsAIの継続的な機能向上を同時に進めることを目的としています。
| 協定名 | 生成AIの利活用等に係る連携協定 |
|---|---|
| 締結日 | 2026年8月24日 |
| 自治体 | 大阪府河内長野市 |
| 連携事業者 | Polimill株式会社 |
| 活用サービス | 行政向け生成AI「QommonsAI」 |
| 主な目的 | 行政実務の効率化、施策立案支援、専門業務へのAI活用、職員能力の向上、QommonsAIの共同改善 |
河内長野市は、行政DXと業務効率化を進めるため、「河内長野市生成AI利用ガイドライン」を策定し、すでに生成AIの業務活用を進めています。
人口減少や少子高齢化によって行政課題と市民ニーズが複雑化するなか、限られた職員数と財源で行政サービスを維持するため、生成AIを適正かつ効果的に活用する必要があるとしています。
自治体が「利用者」から「開発パートナー」へ
一般的なシステム調達では、自治体が事業者の開発したサービスを選定し、完成した機能を利用します。
今回の協定では、河内長野市の職員がQommonsAIを実際の行政業務で使用し、使いやすさ、回答の精度、足りない機能、行政特有の課題などをPolimillへ伝えます。
Polimillは、現場から得たフィードバックを機能開発やサービス設計に活用します。
| 従来型の導入 | 今回の共創型モデル |
|---|---|
| 完成したサービスを自治体が購入・利用 | 自治体職員が実務で検証し、改善へ参加 |
| 事業者が主に開発要件を決定 | 行政現場の課題を開発要件へ反映 |
| 導入後は問い合わせや保守が中心 | 継続的な意見交換と共同研究を実施 |
| 自治体ごとの要望は個別対応 | 現場の知見を共通機能へ発展させる可能性 |
自治体職員が利用者として改善要望を出すだけでなく、行政実務の専門知識を提供し、生成AIの開発へ参加する点が今回の特徴です。
連携協定で取り組む6項目
河内長野市とPolimillは、協定に基づいて主に次の事項で連携します。
- QommonsAIを活用した行政実務の効率化・適正化
- 生成AIによる施策立案の支援
- 法制執務など自治体特有の専門分野での活用
- 生成AI利活用推進プロジェクトチームへの技術支援
- QommonsAIの機能開発・改善に向けた共同研究と意見交換
- 市職員のQommonsAI活用能力の向上
単なる利用契約ではなく、職員研修、実務検証、共同研究、サービス改善までを含む連携です。
Polimillは、QommonsAIの操作に関する助言や他自治体の活用事例を提供するほか、新たに開発した機能やサービスを河内長野市がテスト利用する機会も設ける予定です。
庁内プロジェクトチームが実務活用を推進
河内長野市は、庁内から職員を募り「生成AI利活用推進プロジェクトチーム」を設置しています。
プロジェクトチームは、QommonsAIを実際の業務で活用しながら、効果的な使用方法や利用上の課題を検討します。
行政機関では、同じ生成AIを導入しても、部署によって業務内容が大きく異なります。
- 総務部門の規程・文書作成
- 議会部門の質問・答弁調査
- 政策部門の事例調査と企画立案
- 福祉部門の制度確認
- 市民窓口の問い合わせ対応
- 広報部門の記事・案内文作成
庁内の複数部門から職員が参加することで、特定部署だけの利用では分からない課題を集められます。
プロジェクトチームで得た知見を庁内へ共有できれば、生成AIを一部の詳しい職員だけが使う状態から、組織的に利用する段階へ進める可能性があります。
法制執務への生成AI活用を検討
協定では、法制執務をはじめとする自治体特有の専門分野へのQommonsAI活用が、連携事項として明記されています。
法制執務とは、条例、規則、要綱などの制定・改正や、文言・法令との整合性を確認する業務です。
一般的な文章作成とは異なり、正確な用語、既存法令との関係、改正履歴、条文構造などについて専門的な確認が必要になります。
生成AIを活用すれば、次のような作業を支援できる可能性があります。
- 関係法令の検索
- 他自治体の条例・規則の調査
- 改正文案のたたき台作成
- 新旧対照表作成の補助
- 表記や用語の確認
- 関連制度との整合性確認
ただし、生成AIが作成した条文案を、そのまま正式な条例や規則として使用できるわけではありません。
法令解釈や自治体の権限に関わる内容は、法務担当職員などが根拠資料を確認し、最終的な責任を持って判断する必要があります。
行政向け生成AI「QommonsAI」とは
QommonsAIは、Polimillが開発・提供する行政向け生成AIサービスです。
国内外の法律、政策、論文、自治体事例など、数千万件以上のデータを基に、自治体業務を支援します。
河内長野市の公式発表によると、2026年7月時点で全国約1,000自治体、約50万人が利用しています。
主な活用分野として、次の業務が挙げられています。
- 議会対応
- 政策立案
- 住民対応
- 広報業務
- 法令・制度の調査
- 全国の自治体事例の検索
- 庁内文書を利用した情報検索
QommonsAIは、一般的な対話型AIだけでなく、行政業務に対応する専門機能を備えています。
| 主な機能 | 内容 |
|---|---|
| 議会対応AI | 全国の自治体が公開している議会議事録を検索・参照 |
| 公共サービスサポートAI | 全国の自治体が公開する行政情報や事例を参照 |
| 行政文書AI | e-Gov法令などを参照して法令調査を支援 |
| プライベートナレッジ | 自治体が保有する庁内資料を登録し、独自のRAG環境を構築 |
| 対話型AI | 文章作成、要約、整理、アイデア作成などを支援 |
現場のフィードバックが重要な理由
生成AIの開発企業が技術的に優れた機能を用意しても、自治体の実務に合わなければ定着しません。
行政業務には、民間企業とは異なる次のような条件があります。
- 法令や条例に基づく正確な処理が必要
- 市民の権利や給付に影響する業務がある
- 議会への説明責任がある
- 部署ごとに専門用語や業務手順が異なる
- 個人情報や非公開情報を取り扱う
- 意思決定の根拠を記録する必要がある
- 回答の出典や作成過程を確認する必要がある
こうした実務上の条件は、自治体職員が日常業務で使用しなければ把握しにくいものです。
例えば、検索結果の出典が分かりにくい、条例の改正前の情報が表示される、回答が行政文書の形式に合わないといった問題は、実際の業務で使用することで明らかになります。
河内長野市の職員が課題を整理してPolimillへ伝えることで、QommonsAIを行政現場に適したサービスへ改善できます。
一つの自治体の知見を全国へ展開できるか
今回の共創によって開発された機能が、河内長野市だけでなく、他の自治体でも利用できる形になれば、全国的な行政DXにつながる可能性があります。
法制執務、議会対応、住民からの問い合わせ、庁内規程の検索などは、多くの自治体に共通する業務です。
一つの自治体が見つけた課題を共通機能として改善すれば、他の自治体が同じ問題を一から検証する必要がなくなります。
一方、自治体によって条例、組織、業務手順、情報セキュリティ規程は異なります。
全国共通で利用できる機能と、自治体ごとに設定すべき機能を分けて設計することが重要です。
フィードバックに含める情報の管理が必要
市職員のフィードバックを開発へ反映する場合、業務上の課題や操作方法だけでなく、実際の質問例や生成結果を共有する可能性も考えられます。
ただし、河内長野市やPolimillの公式発表は、個人情報を含む相談内容や行政文書の原文を、そのまま開発目的で外部提供すると説明しているわけではありません。
実際の運用では、次のような情報管理が必要です。
- 開発事業者へ共有できる情報の範囲
- 個人情報や機密情報の除外・匿名化
- 入力データをAIの学習へ利用するかどうか
- 検証用データの保存期間
- 市職員と事業者のアクセス権限
- 共同研究で得た成果の取り扱い
- 他自治体へ機能を展開する際のデータ分離
共創型の開発を進めるには、現場の声を積極的に共有する仕組みと、行政情報を保護する仕組みの両方が必要です。
新機能の先行導入も予定
Polimillは河内長野市に対し、新たに開発した機能やサービスをテスト利用する機会を提供する予定です。
河内長野市は、一般提供前または開発途中の機能を行政実務で検証し、効果や課題をPolimillへ還元します。
この仕組みが機能すれば、次の流れを継続できます。
- Polimillが新機能を開発する
- 河内長野市の職員が業務で試行する
- 操作性、精度、課題を確認する
- 職員が改善意見を提供する
- Polimillが機能を修正する
- 改善した機能を再検証する
従来の単発的な実証実験ではなく、利用と改善を繰り返す継続的な開発モデルです。
導入効果を測る指標も必要
共創型の取り組みを評価するには、意見交換の回数や新機能の数だけではなく、実際の行政業務が改善したかを確認する必要があります。
今後は、次のような指標による検証が考えられます。
- QommonsAIを利用した職員数・部署数
- 文書作成や調査にかかる時間の変化
- 議会対応業務の作業時間
- AIの回答を職員が修正した割合
- 回答の出典を確認できた割合
- 職員から提出された改善提案数
- 改善提案が機能へ反映された件数
- 研修前後の職員の活用能力
- 住民対応や行政サービスへの効果
生成AIの利用回数が増えても、職員が生成結果の確認に長い時間を使っている場合、業務効率化につながっているとは限りません。
利用量だけでなく、業務時間、品質、正確性、市民サービスへの効果を継続的に評価する必要があります。
自治体とAI事業者の関係が変わる
行政向け生成AIが普及するなか、自治体と事業者の関係も変化しています。
これまでは、自治体が仕様書を作り、事業者が要件に沿ったシステムを納入する関係が中心でした。
しかし、生成AIはモデルの更新、参照データの変更、利用方法の拡大によって、導入後も性能やリスクが変化します。
最初に完成した仕様を固定するだけではなく、自治体と事業者が運用中の課題を共有し、継続的に改善する関係が重要になります。
河内長野市とPolimillの協定は、自治体が生成AIを購入する顧客から、行政AIを一緒に育てる開発パートナーへ移行する事例といえます。
まとめ
大阪府河内長野市とPolimill株式会社は2026年8月24日、生成AIの利活用等に係る連携協定を締結しました。
河内長野市の職員が行政向け生成AI「QommonsAI」を実務で使用し、行政現場で得た知見や改善意見をPolimillへ提供します。
Polimillは、フィードバックをQommonsAIの機能開発・設計へ反映し、行政実務に適したサービスへ継続的に改良します。
協定では、行政実務の効率化、施策立案、法制執務、庁内プロジェクトチームへの技術支援、共同研究、職員のAI活用能力向上などに取り組みます。
新機能の先行導入も予定され、河内長野市が実務で検証し、その結果を開発へ還元する循環を構築します。
生成AIは、導入すれば自動的に行政業務へ定着するものではありません。現場の業務、法令、文書形式、説明責任に合わせて改善を続ける必要があります。
今回の協定は、自治体が生成AIの単なる利用者ではなく、行政AIをともに開発するパートナーとなる新しい官民連携モデルです。
English Summary
Kawachinagano City in Osaka Prefecture and Polimill Inc. signed a partnership agreement on August 24, 2026, to promote the use and joint improvement of generative AI in municipal administration.
Municipal employees will use Polimill’s government-focused generative AI platform, QommonsAI, in their daily work and provide practical feedback based on real administrative tasks.
Polimill will use that feedback to improve the functions and design of QommonsAI. The partnership therefore positions the municipality not only as a user of AI but also as a development partner.
The two parties will cooperate in administrative efficiency, policy planning, legislative drafting, technical support for the city’s internal generative AI project team, joint research and employee training.
Kawachinagano City may also test newly developed functions before wider deployment and return the results to Polimill for further improvement.
The project represents a co-creation model in which local-government expertise is incorporated into the continuing development of public-sector AI services.

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