自治体広報にも生成AI――札幌市が公式情報番組「サクッと!さっぽろ」を開始

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札幌市は2026年9月25日、生成AIを活用して制作する市公式情報番組「サクッと!さっぽろ」の配信を開始しました。

生成AIで作成した架空の「札幌市広報官」が、市民生活に関係する情報を約30秒のショート動画で紹介します。

自治体における生成AI活用は、文書作成や議事録の要約など、行政内部の業務効率化が中心でした。

今回の取り組みは、生成AIを市民向けの公式広報に活用する点が特徴です。

スマートフォンで短時間に視聴できる動画を通じて、市政情報を分かりやすく、タイムリーに届ける新しい自治体広報の形として注目されます。


「サクッと!さっぽろ」とは

「サクッと!さっぽろ」は、札幌市が生成AIを活用して制作・配信する公式のウェブ情報番組です。

約30秒の短い動画を基本とし、市民が通勤時間や休憩時間などの隙間時間に、市政情報を確認できるように設計されています。

番組名 サクッと!さっぽろ
配信開始 2026年9月25日
動画の長さ 約30秒
内容 市民生活に関係する札幌市の公式情報
出演者 生成AIで作成した架空の札幌市広報官
制作主体 札幌市
担当 札幌市総務局広報部広報課

札幌市は番組について、正確な情報を基に市政を身近に感じ、市民と一緒に考えていくことを目指すと説明しています。

単にAIキャラクターを登場させるだけでなく、市の制度変更や生活に必要な情報を短時間で届けることが番組の目的です。


2人のAI広報官が市政情報を紹介

番組には、「円山モエ」と「平岡雪人」という2人の札幌市広報官が登場します。

いずれも実在する人物ではなく、生成AIによって作成された架空の人物です。

広報官 設定
円山モエ 2000年5月5日生まれ。好奇心旺盛で社交的。趣味は円山動物園とモエレ沼公園へ行くこと。好物はチーズケーキ
平岡雪人 1994年11月4日生まれ。真面目で情熱的だが、ときどき冗談も言う。趣味はスキーと平岡公園の梅林散策。好物は札幌みそラーメン

円山、モエレ沼、平岡、雪といった札幌に関係する名称やイメージを取り入れ、地域に親しみを持てるキャラクターとして設計されています。

市公式ページでは、2人が生成AIで作成された架空の人物であることも明示されています。

AIによる人物表現を行政広報で使用する場合、実在する職員や市民と誤認されないようにする必要があります。札幌市がAIで作成した人物であることを明記している点は、情報発信の透明性を確保するうえで重要です。


最初のテーマは家庭用ごみ袋

最初に公開された情報のテーマは、札幌市の家庭用ごみ袋に関する変更です。

札幌市では2026年6月から、黄色の指定ごみ袋が不足したことを受け、透明または半透明の袋を一時的に使用できる特例措置を実施していました。

この取り扱いが9月30日で終了し、10月からは再び黄色の指定ごみ袋を使用する必要があることを、AI広報官が動画で案内しています。

同じ内容について、次の3種類の動画が制作されました。

  • 真面目編
  • 分かりません!編
  • マジック編

行政からの通知は正確である一方、文章が長くなったり、制度の対象者以外には読まれにくかったりする課題があります。

同じ公式情報を複数の演出で伝えることで、市民が動画を見るきっかけを増やそうとしていることが分かります。

番組のアーカイブには、2人のAI広報官を紹介する「自己紹介」の動画も掲載されています。


行政内部から市民向け広報へ広がる生成AI

自治体では、すでに多くの生成AI実証が進められています。

主な利用分野は、文章案の作成、要約、翻訳、議事録作成、庁内情報の検索、問い合わせ回答案の作成などです。

これらは行政職員の作業時間を削減するための、内部業務での活用が中心です。

一方、「サクッと!さっぽろ」は、生成AIを使って制作した番組を市民へ直接配信します。

活用分野 主な目的
文書作成・要約 職員の事務作業を効率化
庁内ナレッジ検索 法令、通知、マニュアルなどの検索を支援
AIチャットボット 市民からの問い合わせに回答
AIを活用した公式情報番組 市政情報を短い動画で市民へ届ける

この違いは重要です。

庁内利用では、AIの出力を職員が確認してから業務に利用できます。しかし、市民向け広報では、公開された内容がそのまま市の公式見解として受け止められます。

生成AIを利用していても、情報の正確性や説明責任を負うのは自治体です。


約30秒のショート動画にする理由

自治体の公式サイトには、制度、イベント、防災、子育て、福祉、ごみ収集など、市民生活に必要な情報が数多く掲載されています。

一方、市民が公式サイトを日常的に巡回し、自分に関係する更新情報を探すとは限りません。

短い動画には、次のような利点があります。

  • スマートフォンで短時間に確認できる
  • 文章を読む時間がない人にも情報を届けやすい
  • SNSなどで共有しやすい
  • 制度変更の要点を絞って説明できる
  • 若い世代を含む幅広い層との接点を作れる
  • 同じ内容を複数の演出で発信できる

市民に情報を探しに来てもらうだけでなく、普段利用している動画やSNSの環境へ行政情報を届ける発想です。

生成AIを利用すれば、ナレーション、映像表現、キャラクターの動きなど、動画制作の一部を効率化できる可能性があります。

ただし、札幌市は現時点で、従来の動画制作と比較した費用や作業時間の削減効果を具体的に公表していません。そのため、制作費が大幅に削減されたと断定することはできません。


AIが話しても「札幌市の公式情報」

番組で話している人物は生成AIによる架空の広報官ですが、配信される内容は札幌市の公式情報です。

そのため、一般のAI動画や個人が制作した解説動画とは性質が異なります。

市民は動画の演出だけでなく、情報がいつの時点のものなのか、詳しい条件をどこで確認できるのかを判断できなければなりません。

市民向けのAI広報では、少なくとも次のような運用が重要になります。

  • 公開前に担当部署が内容を確認する
  • AIで制作した人物・映像であることを表示する
  • 制度の対象者、期間、条件を正確に伝える
  • 詳細を確認できる公式ページへ案内する
  • 制度変更や誤りが判明した場合に速やかに訂正する
  • 公開日や情報の基準日を明確にする
  • 過去の動画を適切に管理する

生成AIは伝え方を支援できますが、行政情報の内容を保証する主体にはなれません。

最終的な確認と公開の責任を自治体が持つことが、公式番組としての信頼性を左右します。


AI広報で注意すべき課題

生成AIを利用した自治体広報には、新しい表現方法としての可能性がある一方、注意すべき課題もあります。

誤情報や古い情報の拡散

生成AIが事実と異なる説明を作成した場合、市の公式情報として誤解される可能性があります。

特に、申請期限、対象者、料金、災害情報などは、市民の行動や権利に影響するため、公開前の確認が欠かせません。

AI人物であることの明示

実在する人物のように見えるAIキャラクターを使用する場合、視聴者が実在の職員だと誤認しない表示が必要です。

札幌市は公式ページで、広報官が生成AIで作成した架空の人物であることを明記しています。

短時間では伝えきれない条件

約30秒の動画は要点を伝えるのに適していますが、複雑な制度の例外や詳細条件まで説明することは困難です。

動画から詳細ページへ移動できる導線を用意し、短い動画だけで手続きを完結させない設計が必要になります。

アクセシビリティへの対応

音声を聞けない環境や、映像だけでは内容を理解しにくい人もいます。

字幕、テキストによる説明、読み上げへの対応など、複数の方法で同じ情報を確認できることが望まれます。

デジタル媒体を利用しない市民への対応

ショート動画を利用する人が増えても、すべての市民がスマートフォンや動画サービスを日常的に使うわけではありません。

AI動画は広報手段の一つとして活用し、広報紙、公式サイト、窓口など従来の情報提供手段も維持する必要があります。


災害情報への利用には慎重な設計が必要

札幌市の取り組みが発展すれば、イベント、ごみ収集、子育て、行政手続きなど、さまざまな情報へ応用できる可能性があります。

一方、避難指示や災害発生時の緊急情報では、通常の市政情報以上に正確性と即時性が求められます。

災害広報に生成AIを利用する場合は、誤った表現が入らない仕組み、担当者による承認、訂正方法、既存の防災情報システムとの役割分担などを、あらかじめ決めておく必要があります。

すべての広報を同じ方法でAI化するのではなく、情報の重要度や緊急性に応じて、人間による確認方法を変えることが重要です。


他の自治体へ広がる可能性

自治体広報では、動画を制作したくても、出演者、撮影場所、撮影日程、編集担当者などを継続的に確保できない場合があります。

生成AIによる広報キャラクターを利用すれば、毎回同じ人物を撮影せずに、一定の形式で動画を制作できる可能性があります。

特に職員数や広報予算が限られる自治体にとっては、情報発信を継続するための選択肢になり得ます。

ただし、札幌市の方式をそのまま導入すれば成功するとは限りません。

実際の評価には、次のような指標が必要です。

  • 動画の再生回数と視聴完了率
  • 公式サイトへのアクセス数
  • 制度や手続きに対する市民の理解度
  • 問い合わせ件数の変化
  • 動画1本当たりの制作時間と費用
  • 字幕やテキスト情報の利用状況
  • 誤りや訂正が発生した件数
  • 市民からの信頼性に関する評価

見た目の新しさだけでなく、市民が必要な情報へ到達できたかを検証することが重要です。


「AIが行政を説明する時代」の入口

「サクッと!さっぽろ」は、AIが行政判断を行う仕組みではありません。

札幌市が確認した公式情報を、生成AIによる架空の広報官が分かりやすく伝える取り組みです。

しかし、市民がAIによって作られた人物から日常的に行政情報を受け取る点では、自治体と市民の接点が変化し始めた事例といえます。

今後は、単にAI動画を制作できるかではなく、公式情報としての正確性、透明性、アクセシビリティ、訂正可能性をどのように確保するかが問われます。

生成AIの活用範囲が行政内部から市民向けサービスへ広がるなか、札幌市の取り組みは、自治体広報におけるAI活用の効果と課題を検証する事例になりそうです。


まとめ

札幌市は2026年9月25日、生成AIを活用した市公式情報番組「サクッと!さっぽろ」の配信を開始しました。

生成AIで作成した架空の札幌市広報官「円山モエ」と「平岡雪人」が、市民生活に関係する公式情報を約30秒のショート動画で紹介します。

最初のテーマは家庭用ごみ袋の取り扱いで、同じ情報を異なる演出の3種類の動画で伝えています。

今回の特徴は、生成AIを職員の業務効率化だけでなく、市民へ情報を届ける行政広報に利用したことです。

短時間で親しみやすく情報を伝えられる一方、内容の正確性、AI人物であることの明示、詳細情報への導線、字幕などのアクセシビリティ、公開後の訂正方法が重要になります。

AIが情報の伝え方を支援しても、内容に責任を持つのは自治体です。

「サクッと!さっぽろ」は、生成AI時代に自治体が市民との接点をどのように設計するのかを考える、新しい広報事例といえるでしょう。


English Summary

Sapporo City launched “Sakutto! Sapporo,” an official information program produced with the help of generative AI, on September 25, 2026.

The program features two fictional AI-generated public relations officers, Moe Maruyama and Yukito Hiraoka. They deliver official municipal information through short videos lasting approximately 30 seconds.

The first topic explained the end of a temporary measure that allowed residents to use transparent or semi-transparent household garbage bags due to a shortage of designated yellow bags.

The initiative is notable because it applies generative AI not only to internal administrative work but also to public-facing municipal communications.

While short AI-produced videos may make official information easier to access, municipalities must continue to ensure accuracy, transparency, accessibility, human review and clear procedures for correcting outdated or incorrect information.


参考・出典

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