ナスダックがKraken親会社へ1億ドル出資――株式のトークン化で金融市場はどう変わるのか

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米国の証券取引所運営大手Nasdaq(ナスダック)は2026年9月10日、暗号資産取引所Kraken(クラーケン)の親会社Paywardへ、戦略的投資部門のNasdaq Venturesを通じて1億ドルを出資することで合意しました。

今回の投資は、暗号資産そのものへの投機的な出資というより、株式などの金融資産をブロックチェーン上で扱う「トークン化証券」の取引基盤を強化することが主な目的です。

両社はすでに2026年3月、トークン化された株式の流通や取引を支えるインフラ開発で協力する方針を発表していました。今回の1億ドル出資によって、その協力関係をさらに深めます。

世界有数の証券取引所と大手暗号資産取引所が本格的に連携することで、伝統的な証券市場とブロックチェーン金融の境界が、さらに曖昧になろうとしています。


ナスダックがKraken親会社へ1億ドルを出資

Reutersの報道によると、Nasdaq Venturesは、Krakenを運営するPaywardへ1億ドルを投資することで合意しました。

投資企業 Nasdaq Ventures
投資先 Payward
Paywardの主要事業 暗号資産取引所Krakenの運営
投資額 1億ドル
発表日 2026年9月10日
主な目的 トークン化株式の流通・取引・取引後処理を支える基盤の強化

Nasdaq Venturesは、金融市場の技術革新につながる企業やサービスへ投資するナスダックの戦略的投資部門です。

今回の出資では、Krakenが持つ暗号資産・ブロックチェーン分野の技術や利用基盤と、ナスダックが持つ証券市場の運営、監視、取引処理のノウハウを組み合わせます。

単に「ナスダックが暗号資産交換業者へ投資した」という話ではありません。証券取引所側が、株式市場の将来にブロックチェーン技術が深く関わると判断した動きとして見る必要があります。


ナスダックとKrakenの連携は2026年3月に始動

ナスダックとPaywardは2026年3月、トークン化された金融資産の取引インフラを共同で開発する方針を発表しました。

今回の1億ドル出資は、この協力関係を資本面から強化するものです。

両社が目指しているのは、ブロックチェーン上で資産を動かせる利便性を取り入れながら、従来の証券取引が備えてきた投資家保護、権利管理、市場監視などを維持する仕組みです。

両社が強化する主な領域

  • トークン化株式の発行・流通基盤
  • 国や市場をまたいだトークン化証券の配布
  • 売買注文を成立させる取引機能
  • 決済や資産移転などの取引後処理
  • 市場監視と不正取引対策
  • 既存証券とブロックチェーン市場の接続

報道によると、Paywardはナスダックの市場監視技術を自社の取引プラットフォームへ導入する計画です。

暗号資産取引所の技術的な機動力と、証券取引所が長年構築してきた市場管理の仕組みを組み合わせることで、機関投資家や規制当局から信頼されるトークン化市場を目指します。


トークン化株式とは

トークン化とは、株式、債券、投資信託、不動産、預金などの権利や価値を、ブロックチェーン上のデジタルトークンとして表現する仕組みです。

株式をトークン化する場合、企業の株式や株式に連動する権利をデジタルトークンとして発行し、対応する取引基盤で売買できるようにします。

ただし、「トークン化株式」という名称が使われていても、その法的な構造は商品によって異なります。

  • 実際の株式を裏付け資産として保有するトークン
  • 株価へ連動する契約上の権利を表すトークン
  • 企業が正式に発行したデジタル証券
  • 株式を直接保有せず価格だけに連動する商品

トークンの購入者が株主として議決権や配当請求権を持つのか、裏付けとなる株式がどこで保管されるのか、発行者が破綻した場合に保護されるのかは、商品の設計によって変わります。

そのため、トークン化株式は従来の株式と必ずしも同じものではありません。


トークン化で株式市場はどう変わるのか

株式をブロックチェーン上で扱えるようになると、金融市場の運営方法が大きく変わる可能性があります。

24時間に近い取引が可能になる

従来の証券取引所には、平日の日中を中心とした取引時間があります。

トークン化株式は、ブロックチェーンとデジタル資産向け取引基盤を利用することで、夜間や休日を含む、24時間に近い取引へ対応できる可能性があります。

米国と時差がある日本やアジアの投資家にとっては、米国市場の取引時間に合わせなくても株式関連商品を売買できるようになる可能性があります。

決済期間を短縮できる可能性

通常の証券取引では、注文が成立した時点と、資金・証券の受け渡しが完了する時点に時間差があります。

ブロックチェーン上で証券と資金を連動させれば、売買成立後の決済を短縮し、条件によっては即時に近い形で完了できる可能性があります。

決済時間の短縮は、取引相手が受け渡しを完了できないカウンターパーティーリスクや、決済までに必要となる担保負担の軽減につながると期待されています。

小口化しやすくなる

高額な株式や金融商品でも、トークンとして細かく分割すれば、より小さな単位で取引できる可能性があります。

これにより、これまで資金面や取引単位の制約で購入しにくかった資産へ、個人投資家がアクセスしやすくなることが期待されます。

国境を越えた流通が容易になる

ブロックチェーンはインターネット上で利用できるため、技術的には国をまたいだ資産移転や取引を行いやすくなります。

しかし、証券取引には国ごとの登録制度、投資家保護、税制、本人確認、マネーロンダリング対策があるため、技術的に移転できることと、法的に自由に取引できることは別の問題です。


従来の株式とトークン化株式の違い

項目 従来の株式 トークン化株式
記録方法 証券会社や振替機関のシステム ブロックチェーン上のトークン
取引時間 取引所の営業時間が中心 24時間に近い取引が可能になる場合がある
決済 市場の決済ルールに従う 短時間・即時決済の可能性がある
取引単位 市場や証券会社の単位 細かく分割できる場合がある
株主としての権利 法律上の株主として明確 トークンの設計によって異なる
保管方法 証券口座 取引口座やデジタルウォレット
主なリスク 価格変動、市場・信用リスク 価格変動に加え、秘密鍵、スマートコントラクト、発行者リスク

トークン化によって取引の利便性が高まっても、従来の株式と同等の権利が自動的に付与されるわけではありません。

投資する際には、トークンが何を表しているのかを確認する必要があります。


なぜナスダックは暗号資産取引所と組むのか

ナスダックは、株式市場の運営だけでなく、世界各国の取引所、銀行、証券会社などへ取引・市場監視技術を提供する金融テクノロジー企業でもあります。

一方のKrakenは、暗号資産を24時間取引するためのインフラ、デジタルウォレット、ブロックチェーン上の資産移転、グローバルな利用者基盤を持っています。

ナスダックの強み Kraken・Paywardの強み
証券市場の運営経験 暗号資産の24時間取引基盤
市場監視と不正取引対策 ブロックチェーン技術
金融機関・規制当局との接点 デジタルウォレットと資産移転
取引・清算技術 暗号資産利用者へのアクセス
機関投資家からの信頼 新しい金融商品の開発力

両社が連携することで、証券市場の信頼性とブロックチェーン市場の柔軟性を組み合わせる狙いがあります。

ナスダックにとっては、暗号資産取引所が株式やデリバティブ分野へ進出するなかで、次世代の取引市場における主導権を確保する意味もあります。


Krakenはすでに株式のトークン化を進めている

Krakenは暗号資産だけでなく、株式、上場投資信託、先物、デリバティブなどへ事業領域を拡大しています。

同社は、米国外の利用者を対象として、米国株やETFをデジタルトークンとして取引できるサービスを展開してきました。

今回のナスダックとの協力では、単一の暗号資産取引所内だけで利用できる商品ではなく、複数の市場環境を移動できる株式トークンの仕組みを目指していると報じられています。

重要なのは、従来の株式が持つ権利や投資家保護を維持しながら、トークンとして市場間を移動できる仕組みを作ろうとしている点です。


2027年第2四半期の提供開始を想定

報道によると、ナスダックはトークン化株式の提供を2027年第2四半期に開始することを想定しています。

ただし、実際の開始時期、対象銘柄、対象地域、利用できる投資家、対応するブロックチェーンなどは、今後の規制承認やシステム開発によって変更される可能性があります。

また、世界中の投資家が同じ条件で利用できるとは限りません。証券規制は国や地域によって異なるため、日本居住者が利用できるかどうかも、国内法やサービス提供条件に左右されます。


トークン化証券が抱える課題

トークン化は金融市場の効率化につながる可能性がありますが、解決すべき問題も残されています。

株主としての権利が分かりにくい

トークンの保有者が実際の株主として登録されるのか、配当、議決権、株主優待などを受け取れるのかは、商品によって異なります。

「株価に連動するトークン」と「企業が発行した株式」は、法的には同じではない場合があります。

規制が国によって異なる

証券法、暗号資産規制、本人確認、資産保全、税制は国ごとに異なります。

ブロックチェーン上では国境を越えて移転できても、各国の投資家へ自由に販売できるとは限りません。

市場が分断される可能性

同じ企業の株式に連動するトークンが複数の事業者から発行されると、取引価格や流動性が分散する可能性があります。

従来市場の株価とトークン市場の価格に差が生じた場合、どのように価格を一致させるのかも課題です。

発行者・保管事業者の信用リスク

裏付けとなる株式を発行事業者や第三者機関が保管する場合、その事業者が破綻した際に投資家の資産がどのように扱われるかを確認する必要があります。

技術的なリスク

スマートコントラクトの不具合、秘密鍵の流出、サイバー攻撃、ブロックチェーンの停止や混雑など、従来の証券市場とは異なるリスクもあります。


証券取引所と暗号資産業界の競争が本格化

金融市場では、暗号資産企業が株式、ETF、先物などの伝統的な金融商品へ進出する一方、証券取引所もブロックチェーンやデジタル資産分野へ事業を広げています。

ニューヨーク証券取引所を傘下に持つIntercontinental Exchangeなども、トークン化市場や取引時間の拡大に向けた取り組みを進めています。

これまで、証券取引所と暗号資産取引所は別の業界として扱われてきました。

しかし、株式がトークンとして暗号資産取引基盤上で売買されるようになれば、両者は同じ顧客、資産、取引時間、決済サービスを巡って競争することになります。

今回のナスダックによる出資は、暗号資産業界を外部の競争相手として見るだけでなく、提携や資本参加を通じて次世代市場を共同開発する方向へ進んだことを示しています。


日本市場への影響

今回の投資が、直ちに日本国内でトークン化された米国株の24時間取引を可能にするわけではありません。

日本でトークン化証券を提供する場合は、金融商品取引法をはじめとする国内の規制、事業者登録、投資家保護、資産管理、税務上の取り扱いを確認する必要があります。

一方、日本でもセキュリティトークンを利用した不動産、社債、受益証券などのデジタル化が進められています。

ナスダックとKrakenによる株式トークン基盤が実用化されれば、日本の証券会社、取引所、金融機関にとっても、次のような検討が必要になります。

  • 株式取引時間の拡大
  • ブロックチェーンを利用した証券決済
  • 海外トークン化証券へのアクセス
  • デジタルウォレットと証券口座の連携
  • トークン保有者の権利管理
  • 取引監視とマネーロンダリング対策
  • 暗号資産事業者との提携

既存の証券市場が急にブロックチェーンへ置き換わる可能性は低いものの、従来システムとトークン化市場が並行して運用される時代は近づいています。


よくある質問

ナスダックはKrakenへ直接出資するのですか?

出資先はKrakenの親会社Paywardです。Nasdaq Venturesが1億ドルを投資することで合意したと報じられています。

トークン化株式は暗号資産ですか?

ブロックチェーン上のトークンとして扱われますが、ビットコインのような暗号資産とは性質が異なります。株式や株価に関連する権利をデジタル化した金融商品です。

トークンを買えば実際の株主になれますか?

商品設計によって異なります。議決権や配当請求権を持つ場合もあれば、株価へ連動する契約上の権利だけを持つ場合もあります。

24時間いつでも取引できますか?

トークン化によって24時間に近い取引が可能になることが期待されていますが、対象商品、規制、流動性、システムの運用条件によって制限される場合があります。

日本から利用できますか?

現時点で、日本居住者が今回の共同基盤を利用できると確定したわけではありません。サービス提供地域や日本の規制により、利用できない可能性があります。

2027年に必ず開始されますか?

報道では2027年第2四半期の提供開始が想定されていますが、規制承認や開発状況によって変更される可能性があります。


まとめ

ナスダックは2026年9月10日、Nasdaq Venturesを通じて、暗号資産取引所Krakenの親会社Paywardへ1億ドルを投資することで合意しました。

両社は、トークン化株式の世界的な流通、取引、決済、市場監視を支えるインフラを共同で強化します。

今回の動きは、伝統的な証券取引所と暗号資産取引所の融合が、実験段階から具体的な金融インフラ開発へ移行していることを示しています。

トークン化によって、24時間に近い取引、決済時間の短縮、資産の小口化、国境を越えた流通などが実現する可能性があります。

一方で、株主としての権利、資産保全、各国の規制、市場の分断、サイバーセキュリティなど、解決すべき課題も残されています。

金融市場が全面的にブロックチェーンへ置き換わるのではなく、既存の証券市場とトークン化市場が接続され、投資家が複数の取引方法を選択する方向へ進むと考えられます。

ナスダックとKrakenの提携は、その転換点を示す象徴的な事例となりそうです。

※本記事は公開情報を基にしたニュース解説であり、特定の金融商品や暗号資産への投資を推奨するものではありません。


English Summary

Nasdaq agreed to invest $100 million in Payward, the parent company of cryptocurrency exchange Kraken, through its strategic investment arm Nasdaq Ventures.

The investment deepens a partnership focused on developing infrastructure for the global distribution, trading and post-trade processing of tokenized equities.

Tokenized stocks could enable near-24-hour trading, faster settlement, fractional ownership and broader international access. However, their legal structure, shareholder rights, custody arrangements and regulatory treatment can differ from conventional shares.

The partnership represents a significant convergence between traditional securities exchanges and crypto-native financial infrastructure. It also highlights the growing competition to determine who will operate the next generation of global financial markets.


参考・出典

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