

飛騨3市1村が結集──戦国武将がAIで蘇る「飛騨全域・城めぐりマップ」完成
岐阜県飛騨市は、高山市・下呂市・白川村の協力のもと、飛騨地域全域の城郭を一つにまとめた「飛騨全域・城めぐりマップ」を制作した。
これまで城郭や史跡を紹介するパンフレットは、各自治体ごとに作られることが多かった。しかし今回のマップは、飛騨市・高山市・下呂市・白川村という3市1村が連携し、飛騨国を一つの歴史圏として巡れるように構成されている。
大きな特徴は、各自治体の学芸員が厳選した城跡の紹介に加え、肖像画が残っていない武将たちを、学芸員監修のもとAIイラストで再現している点だ。
歴史研究、観光導線、そして最新AI技術を組み合わせた、飛騨地域ならではの新しい歴史観光プロジェクトと言える。
自治体の枠を越えた「飛騨全域」の城めぐり
飛騨市には、江馬氏城館跡や姉小路氏城跡など、戦国時代の山城・館跡が多く残されている。飛騨市教育委員会では、2017年からこれらの調査や保存、活用を進めてきた。
一方で、戦国時代の飛騨を理解するには、飛騨市だけでなく、高山市、下呂市、白川村までを含めた広い視点が必要になる。
今回のマップは、城郭ファンや観光客から寄せられていた「行政区分ではなく、飛騨地域全体の城を一つのマップで見たい」という声に応える形で制作された。
令和6・7年度の「史跡姉小路氏城跡保存活用計画」の策定を機に、自治体の垣根を越えた広域連携が実現した点も大きい。
飛騨戦国史を凝縮した「9つの城」
マップでは、飛騨地域に点在する多数の城郭の中から、歴史的価値、アクセス性、逸話・ストーリー性などを踏まえて、9つの城跡が厳選されている。
掲載城郭には、古川城、小島城、松倉城、江馬氏館、高原諏訪城、帰雲城、高山城など、飛騨戦国史を象徴する城跡群が含まれている。
中でも注目されるのが、白川郷周辺を拠点とした内ケ島氏の居城として知られる「帰雲城」だ。
帰雲城は、1586年に発生した天正地震によって山崩れとともに埋没したと伝えられている。現在でも“幻の城”として語られる、飛騨戦国史を代表する伝説的な城である。
AIで蘇る飛騨の戦国武将
今回のマップ最大の見どころの一つが、AIで再現された武将イラストだ。
飛騨の戦国武将の多くは、肖像画が残されていない。しかし今回、学芸員が歴史的エピソードや人物像を監修し、最新AI技術を使ってビジュアル化した。
江馬輝盛、内ケ島氏理、金森可重など、飛騨の戦国史を彩る人物たちが、現代のビジュアル表現によって新たに描き出されている。
担当学芸員は、武将イラストについて10回以上リテイクを重ねたとされ、単なるAI生成画像ではなく、歴史の空気感や人物像にこだわった表現となっている。
図解:飛騨全域・城めぐりマップの特徴
| 特徴 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 広域連携 | 飛騨市・高山市・下呂市・白川村が協力 | 自治体の枠を越えた歴史観光マップ |
| 9つの城跡 | 学芸員が主要城跡を厳選 | 初心者から城郭ファンまで楽しめる構成 |
| AI武将再現 | 学芸員監修のもとAIイラストを制作 | 歴史研究と最新技術を融合 |
| 観光実用性 | アクセスや周遊情報も掲載 | 旅行計画にも使いやすい |
| 地域活性化 | 山城ガイドや関係人口創出へ展開 | 歴史文化を地域ブランドに育てる |
飛騨の群雄たちと城跡
現在の飛騨地域は、古代から「飛騨国」と呼ばれた一つの国だった。戦国時代には、姉小路氏、三木氏、江馬氏、内ケ島氏などがそれぞれの地域を治め、複雑な勢力争いを繰り広げていた。
姉小路氏
姉小路氏は、飛騨古川周辺を拠点とした一族で、京都の公家「飛騨国司」としての格式を持ちながら、在地領主としても活動した。古川城や小島城などが関連城跡として知られている。
三木氏
三木氏は南飛騨を本拠とし、戦国時代には高山・古川方面へ勢力を拡大した。松倉城、広瀬城、桜洞城、萩原諏訪城などと関わりが深い。
江馬氏
江馬氏は、飛騨北部の高原郷を治めた一族で、江馬氏館や高原諏訪城が知られている。江馬氏館は、武家屋敷と庭園を備えた居館跡として重要な価値を持つ。
内ケ島氏
内ケ島氏は白川郷周辺を拠点とし、帰雲城を居城とした一族だ。天正地震によって帰雲城とともに歴史の表舞台から姿を消したと伝えられている。
金森氏
金森長近は織田信長に仕え、のちに豊臣秀吉の命によって飛騨へ侵攻した。金森氏の入国によって飛騨は近世へ向かい、高山城を中心とした新たな統治が始まった。
歴史資料としても、観光マップとしても使える構成
今回のマップは、専門的な歴史解説だけでなく、観光客が実際に巡りやすいように設計されている点も特徴だ。
都市圏からのアクセス、主要観光地との位置関係、周遊ルートなども掲載されており、歴史ファンだけでなく、飛騨観光を深く楽しみたい人にも使いやすい内容になっている。
飛騨古川、高山、下呂温泉、白川郷といった既存の観光地に、山城や戦国史という新しい切り口を加えることで、滞在時間の延長や周遊観光の促進にもつながりそうだ。
山城を地域の誇りへ
飛騨市では、山城を単に保存するだけでなく、地域資源として活用する取り組みも進めている。
市民や山城ファンがその価値を学び、実際に現地を巡ることで、地域への愛着や交流を生み出すことを目指している。
2025年には、山城の魅力を伝える「飛騨市山城ガイド」も認定されており、地域住民と歴史文化を結びつける動きが広がっている。
今回の「飛騨全域・城めぐりマップ」は、こうした山城活用の取り組みを飛騨全域へ広げる一歩とも言える。
AIと歴史文化の新しい関係
今回の取り組みは、AI活用の新しい可能性も示している。
AIはビジネス効率化や自動化の文脈で語られることが多いが、歴史文化や観光振興の分野でも活用が広がりつつある。
特に、肖像画が残っていない人物を、史料や専門家の監修をもとにビジュアル化する試みは、歴史への入口を広げる効果がある。
もちろん、AIによる歴史表現には慎重さも必要だ。史実と創作の境界を明確にし、専門家の監修を前提にすることが重要になる。
今回のプロジェクトは、その意味でも「AIだけに任せる」のではなく、学芸員の知見とAI技術を組み合わせた好例と言える。
入手方法
「飛騨全域・城めぐりマップ」は、飛騨市内の観光案内所、文化施設、関係自治体の主要施設などで配布される。
また、公式サイト「飛騨市の文化財」でもPDF版が公開されている。
飛騨の山城や戦国史に興味がある人は、現地を訪れる前にマップを確認しておくと、より深く楽しめそうだ。
まとめ
飛騨市、高山市、下呂市、白川村が連携して制作した「飛騨全域・城めぐりマップ」は、飛騨地域の戦国史を一つの視点で巡れる新しい広域観光マップだ。
9つの城跡、学芸員監修のAI武将イラスト、観光導線、そして山城を地域資源として活用する視点が盛り込まれている。
飛騨の戦国史は、決して大河ドラマの主役級の武将だけで語られるものではない。山深い地域に根を張った国人領主たちの戦い、館や山城の痕跡、そして地域に残る記憶によって形作られている。
その魅力を、自治体の枠を越えて一枚のマップに凝縮した今回の取り組みは、歴史観光とAI活用を結びつける新しいモデルになる可能性がある。
飛騨の乱世を、現地で体感する。
このマップは、その旅の入口になるはずだ。
出典:
岐阜県飛騨市発表資料、飛騨市の文化財、PR TIMES掲載情報

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