デジタル庁が「自治体版バイバイン」実証へ――国への照会やデータ分析を生成AIで効率化

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デジタル庁は、自治体職員が政府機関へ問い合わせる照会事務を効率化する生成AI機能「自治体版バイバイン」の実証事業を開始します。

全国の都道府県と市区町村から50~100団体程度を募集し、2026年11月24日から2027年2月10日まで実証を行います。

自治体版バイバインは、自治体職員が日常的な言葉で質問すると、法令、通知、通達、制度解説、過去の照会回答、FAQなどを検索し、必要な情報の整理や分析を支援する生成AI機能です。

今回の重要な点は、自治体が個別に生成AIサービスを導入するのではなく、国と地方の間で共通して利用できるAIサービスの構築を目指していることです。

ただし、現時点では参加自治体を募集している実証段階です。業務時間の削減効果や正式な全国展開は、まだ確定していません。


自治体版バイバインとは

自治体版バイバインは、自治体職員による行政情報の検索、整理、分析を支援する生成AI機能です。

専門的な検索キーワードを組み立てなくても、日常的な言葉による質問形式で、関係する行政資料を探せる仕組みを目指しています。

参照対象として想定されている情報

  • 法令
  • 通知・通達
  • 国からの事務連絡
  • 制度解説
  • 過去の照会回答
  • 条例
  • 業務の手引き
  • 他自治体などの事例
  • FAQ

生成AIが回答だけを表示するのではなく、回答の根拠となる資料を職員が確認できる設計が想定されています。

自治体職員は、生成された回答と根拠資料を確認したうえで、実際の判断や国への照会に利用します。


なぜ国への照会業務に生成AIが必要なのか

自治体職員が新しい制度や法令改正へ対応する場合、関係する法令、通知、標準仕様書、過去の照会回答などを確認しなければなりません。

必要な情報が複数の資料や政府機関に分散していると、適切な資料や照会先を特定するまでに時間がかかります。

回答する国側でも、関係資料を検索し、過去の対応と矛盾がないか確認する作業が発生します。同じような質問が複数の自治体から繰り返されることもあります。

自治体版バイバインでは、過去の回答や関連資料を横断的に検索できるようにすることで、自治体と国の双方の負担軽減を目指します。

想定される効果

  • 必要な法令や通知へ早く到達できる
  • 国へ問い合わせる前に過去の回答やFAQを確認できる
  • 照会内容を整理しやすくなる
  • 類似する照会への重複対応を減らせる
  • 回答の根拠となる資料を確認できる
  • 職員が判断や調整などの業務へ時間を使える

生活保護や介護保険、システム標準化での利用を想定

デジタル庁の説明会資料では、自治体版バイバインの利用例として、行政現場で発生する制度解釈や情報探索が挙げられています。

利用場面 想定される使い方
生活保護制度 医療扶助や収入認定などの制度解釈と運用方法を確認
介護保険制度 過去の照会回答やFAQを確認し、国への照会が必要か判断
システム標準化 標準仕様書や事務連絡を検索し、解釈や対応方針を整理
制度改正 法令や制度の改正内容を確認し、自治体としての対応を検討
他自治体事例 同様の課題を持つ自治体の事例を探し、対応方針を検討

2026年度の実証で国から提供されるデータは、主に自治体情報システムの標準化に関係する資料が想定されています。

自治体版バイバインが、あらゆる行政分野の情報を最初から網羅するわけではありません。実証を通じて、必要なデータや機能、運用上の課題を確認します。


国・地方のAI共通サービスを目指す

今回の事業は、デジタル庁が「国・地方AI共通サービスに関する実証事業」として進めるものです。

自治体がそれぞれ生成AIサービスを調達し、個別に行政資料を登録する方法では、導入費用、セキュリティ、データ整備、職員研修などが自治体ごとに必要になります。

一方、国・地方の共通サービスとして整備できれば、国が保有する法令、通知、制度解説、過去の照会回答などを、複数の自治体が共通して参照できる可能性があります。

照会事例を蓄積し、同じ質問への回答を再利用できるようになれば、小規模な自治体でも行政情報へアクセスしやすくなることが期待されます。

国側にとっても、定型的な問い合わせへの対応を減らし、個別判断や制度調整など、より専門性の高い業務へ人員を振り向けられる可能性があります。


実証自治体は50~100団体程度

事業名 自治体からの照会事務の自動化などの国・地方AI共通サービスに関する実証事業
提供機能 自治体版バイバイン
募集対象 全国の都道府県および市区町村
募集規模 50~100団体程度
募集期間 2026年10月26日~11月13日
選定方法 参加条件への適合を確認したうえで原則先着順
選定結果通知 2026年11月20日予定
実証期間 2026年11月24日~2027年2月10日
運営委託先 シンプレクス株式会社

同じ自治体から複数の部署が参加することも可能です。

ただし、募集数に達した場合は、2026年11月13日より前に受付を終了する可能性があります。参加を希望する自治体は、デジタル庁が案内する応募フォームから申し込みます。

デジタル庁の募集案内・応募フォームを確認する


参加自治体に求められること

参加自治体は、システムを利用するだけでなく、実証結果の確認や効果測定にも協力します。

主な参加条件

  • 参加部署、利用者、連絡担当者を決める
  • 利用者ごとのIDとパスワードを適切に管理する
  • 生成された回答と根拠資料を確認する
  • 利便性、業務上の有用性、課題を評価する
  • 事務局が実施するアンケートへ回答する
  • 必要に応じてヒアリングや追加確認へ協力する
  • インターネット経由でアクセスできる端末とネットワークを用意する

継続的な利用の目安として、1カ月当たり4日以上のログインと、10件以上の質問が示されています。

現時点では、LGWANなどの閉域ネットワークだけから自治体版バイバインを利用することはできません。インターネットへ接続できる利用環境が必要です。


システム利用料はデジタル庁が負担

実証期間中のシステム利用料は、デジタル庁が負担します。

参加自治体は、生成AIサービスの利用料を予算化したり、新たにシステムを調達したりせずに試行できます。

一方、次の費用は参加自治体側の負担となります。

  • 通信費
  • 端末やネットワーク環境の準備・維持費
  • 自治体保有データを提供する場合の準備費
  • アンケートやヒアリングへ対応する職員の人件費

すべての参加自治体に新たな費用が一律に発生するという意味ではなく、各自治体の参加方法や利用環境に応じて負担が生じます。


入力できる情報には制限がある

実証開始時点で入力できるのは、原則として「自治体機密性1情報」です。

一般への公表を前提としていない情報や、住民記録、税務情報、職員の個人情報、入札予定価格などは、事務局から別途案内があるまで入力できません。

入力が禁止される主な情報

  • 秘密文書に当たる自治体機密性3A情報
  • 事務局が認めていない自治体機密性2・3B・3C情報
  • 個人番号・特定個人情報
  • 法令、条例、契約などで利用や提供が認められていない情報
  • 第三者の著作権、商標権、肖像権などを侵害する情報
  • 参加自治体が適法な利用権限を持たない情報
  • 実証事業の目的と関係のない情報

自治体が保有する資料をアップロードする機能については、セキュリティ面を確認したうえで、実証期間中に追加するかどうかを検討するとされています。

情報区分や利用可否を判断できない場合は、所属自治体の情報セキュリティポリシーや規程を確認し、判断できるまで入力しないことが必要です。


AIの回答だけで行政判断をしない

自治体版バイバインは、行政判断を自動化するシステムではありません。

参加自治体には、生成された回答と、その根拠となる資料を確認することが求められています。

法令や通知の解釈、給付、許認可、住民対応などでは、情報が最新か、地域の条例や運用ルールと矛盾していないかを職員が確認する必要があります。

生成AIは情報探索や論点整理を支援しますが、最終的な判断と説明責任は自治体側に残ります。


現時点では実証段階

今回の募集は、自治体版バイバインの正式導入や全国展開を発表するものではありません。

実証では、主に次の項目を検証します。

  • 照会目的を達成するまでの時間を短縮できるか
  • 生成された回答が正確で有用か
  • 自治体職員が操作しやすいか
  • 実務で継続して利用したいと思えるか
  • 本格展開に必要なデータや機能は何か
  • 情報管理や運用上の課題を解決できるか
  • 国と地方の役割や費用負担をどう設計するか

現段階では、何時間の業務を削減できるか、何件の国への照会を減らせるかといった効果は確定していません。

実証結果を基に、技術面、データ面、制度面、費用面を含めた本格展開の条件が検討されます。


自治体AIが個別導入から共通サービスへ

これまでの自治体生成AIは、各自治体が個別にサービスを調達し、文章作成、要約、議事録作成、庁内情報検索などに利用する事例が中心でした。

自治体版バイバインは、国が整備する行政データと生成AI機能を、複数の自治体が共通して利用する方向を示しています。

自治体ごとに重複していた資料検索や国への照会を共通サービスで支援できれば、人口規模や予算、専門人材の違いによるデジタル活用の格差を縮小できる可能性があります。

一方、全国の自治体で共通利用するには、情報の更新、回答の正確性、自治体ごとの条例や運用の違い、アクセス環境、費用分担など、解決すべき課題もあります。

今回の実証は、生成AIを自治体ごとの便利なツールとして導入する段階から、国と地方の行政事務をつなぐ共通インフラとして検討する段階へ進む取り組みといえるでしょう。


まとめ

デジタル庁は、自治体職員の政府機関への照会業務を効率化する生成AI機能「自治体版バイバイン」の実証参加自治体を募集しています。

募集規模は全国の都道府県と市区町村から50~100団体程度で、応募期限は2026年11月13日です。実証期間は2026年11月24日から2027年2月10日までを予定しています。

自治体版バイバインは、法令、通知、通達、制度解説、過去の照会回答、FAQなどを検索し、情報の整理や分析、回答根拠の確認を支援します。

ただし、生成AIの回答をそのまま行政判断へ使用するものではありません。職員による回答内容と根拠資料の確認が必要です。

今回の事業はまだ実証段階で、導入効果や本格展開は確定していません。

それでも、自治体ごとに分かれていた生成AI活用が、国・地方の共通サービスへ進み始めた重要な事例です。実証を通じて、国と地方をつなぐ行政AIの実用性と課題が検証されます。


English Summary

Japan’s Digital Agency is recruiting approximately 50 to 100 prefectural and municipal governments for a pilot program involving a generative AI function called “Baibain for Local Governments.”

The system is designed to help municipal employees search, organize and analyze laws, government notices, administrative guidance, previous inquiry responses and FAQ documents using natural-language questions.

Applications are open until November 13, 2026, although recruitment may close early if the planned number of participants is reached. The pilot is scheduled to run from November 24, 2026, through February 10, 2027.

The Digital Agency will cover the system usage fees during the pilot. Participating municipalities must provide an internet-accessible environment, review AI-generated answers and supporting sources, and cooperate with surveys and interviews.

The project remains at the experimental stage. Its effectiveness and full-scale deployment have not yet been confirmed.


参考・出典

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