

マルチキャッシュレス決済サービスを展開する株式会社ネットスターズは2026年9月11日、EVM互換のパブリックブロックチェーン「Kaia」を運営するKaia DLT Foundationと、ステーブルコイン決済に関する基本合意書(MOU)を締結しました。
両者は、Kaia上で発行・流通するステーブルコインと、ネットスターズの「StarPay」および「Stablecoin Pay」を接続し、アジア各国のステーブルコインを日本国内の実店舗で利用できる環境の構築を目指します。
利用者はステーブルコインで支払い、店舗側は日本円で売上代金を受け取る仕組みを前提に検討します。
店舗側が暗号資産やステーブルコインを直接保有しなくても、従来のキャッシュレス決済に近い方法で受け入れられる点が、今回の構想の重要な特徴です。
ネットスターズの「StarPay」は約70万拠点の加盟店ネットワークを持ちます。ただし、現時点で約70万拠点すべてがステーブルコイン決済へ対応したわけではありません。
正確には、既存の約70万拠点の決済基盤を活用し、今後ステーブルコイン決済を日本の実店舗へ広げるための技術面、制度面、事業面の検証を進める段階です。
ネットスターズとKaiaがステーブルコイン決済で提携
ネットスターズとKaia DLT Foundationは、日本とアジアの実店舗をステーブルコインで結ぶ決済環境の構築に向けて協力します。
| 発表日 | 2026年9月11日 |
|---|---|
| 提携企業・団体 | 株式会社ネットスターズ、Kaia DLT Foundation |
| 契約形態 | 基本合意書(MOU) |
| ネットスターズ側のサービス | StarPay、Stablecoin Pay |
| 主な目的 | Kaia上のステーブルコインを日本の実店舗で利用できる環境の構築 |
| 加盟店への入金 | 日本円で行う仕組みを前提に検討 |
| 将来の対象 | 韓国ウォン、香港ドル、台湾ドル、東南アジア各国通貨などに連動するステーブルコイン |
今回の提携では、Kaiaがアジアで構築しているブロックチェーンとステーブルコイン基盤に、ネットスターズが日本で展開する店舗決済ネットワークを接続します。
両者は、対象となるステーブルコイン、対応店舗、決済方法、通貨交換、流動性、加盟店への清算方法などを共同で検証します。
約70万拠点がすぐに対応するわけではない
今回の発表で特に注目されるのが、ネットスターズの加盟店ネットワークです。
ネットスターズは「StarPay」を通じて、約70万拠点、導入企業1万5,000社以上、年間決済取扱高2兆円超の決済ネットワークを展開しています。
コンビニエンスストア、ドラッグストア、飲食店、商業施設、観光施設などで利用されている既存の決済接続基盤を、ステーブルコイン決済にも活用しようとしています。
ただし、公式発表は「約70万拠点でステーブルコイン決済が開始された」と説明しているわけではありません。
| 表現 | 評価 |
|---|---|
| StarPayは約70万拠点の加盟店ネットワークを持つ | 正確 |
| ネットスターズとKaiaがステーブルコイン決済で提携した | 正確 |
| 約70万店舗すべてでステーブルコインが使える | 現時点では不正確 |
| 既存の加盟店基盤を活用して対応拡大を検討する | 正確 |
| ローソン全店舗で正式導入された | 不正確 |
今回のニュースは、約70万拠点へ接続可能な既存基盤を持つ事業者が、Kaiaとの連携によってステーブルコイン決済の拡大を検討するという内容です。
店舗側は日本円で受け取れる仕組み
ステーブルコイン決済を実店舗へ導入するうえで、大きな課題になるのが店舗側の負担です。
店舗がステーブルコインを直接受け取る方式では、デジタルウォレットの管理、秘密鍵の保管、円への交換、会計処理、価格変動、資金決済法などへの対応が必要になる可能性があります。
ネットスターズとKaiaが検討する仕組みでは、利用者がステーブルコインで支払う一方、加盟店への入金は日本円で行います。
想定される決済の流れ
- 利用者が対応するデジタルウォレットを起動します。
- 利用するステーブルコインを選択します。
- 店舗のレジや決済端末で支払い情報を読み取ります。
- 決済システムが取引内容と残高を確認します。
- ステーブルコインを円へ交換する処理を行います。
- 店舗には日本円で売上代金を入金します。
この方式であれば、店舗はステーブルコインを直接保有する必要がなく、売上管理や精算を日本円ベースで行えます。
店舗スタッフの操作も、既存のQRコード決済やバーコード決済に近づけられるため、教育やレジ運用の負担を抑えられる可能性があります。
Stablecoin PayはJPYC・USDC・USDTに対応
ネットスターズは2026年7月、店舗向けステーブルコイン決済サービス「Stablecoin Pay」の提供を開始しました。
サービス開始時点では、日本円建てのJPYCと、米ドル建てのUSDC、USDTに対応しています。
| ステーブルコイン | 連動する通貨 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| JPYC | 日本円 | 日本円と連動するよう設計されたステーブルコイン |
| USDC | 米ドル | 米ドル連動型として国際的に利用されるステーブルコイン |
| USDT | 米ドル | 世界的に流通規模の大きい米ドル連動型ステーブルコイン |
Stablecoin Payでは、店舗が一度の申請で複数のステーブルコイン決済を導入・運用できる仕組みを採用しています。
商品の価格表示、売上管理、店舗への精算は、米ドル建てのUSDCやUSDTが使われた場合でも日本円ベースで行える設計です。
対応ブロックチェーンやウォレットは段階的に拡大される計画で、今回のKaiaとの提携もマルチチェーン、マルチウォレット、マルチコイン対応を進める取り組みの一つです。
Kaiaとは
Kaiaは、LINEのブロックチェーン「Finschia」と、韓国Kakaoのブロックチェーン「Klaytn」が統合して、2024年に誕生したEVM互換のパブリックブロックチェーンです。
EVM互換とは、Ethereum向けに開発されたスマートコントラクトやアプリケーションを比較的移行・接続しやすい構造を持つことを意味します。
Kaiaは、LINEやKakaoTalkなどのメッセージングサービスを通じて、アジアの多数の利用者へ接続できる可能性を持つことを強みとしています。
公式発表では、2億5,000万人以上の潜在的なユーザー基盤が示されています。
Kaia上で展開される主なステーブルコイン
- 米ドル建てのUSDT
- 日本円建てのJPYC
- インドネシアルピア建てのIDRX
- アジア各国の法定通貨に連動するステーブルコイン
今回の提携では、日本円や米ドルだけでなく、韓国ウォン、香港ドル、台湾ドル、東南アジア主要国の通貨に連動するステーブルコインへの対応可能性も検討します。
ローソンでPOSレジ連携の実証を実施
ネットスターズはKaiaとの提携に先立ち、ローソン店舗の既存POSレジを利用したステーブルコイン決済の実証実験を行っています。
2026年8月6日にはローソン高輪ゲートウェイシティ店、8月17日にはローソンゲートシティ大崎アトリウム店で実施されました。
| 実施日 | 店舗 | ウォレット | 利用コイン |
|---|---|---|---|
| 2026年8月6日 | ローソン高輪ゲートウェイシティ店 | HashPort Wallet | JPYC |
| 2026年8月17日 | ローソンゲートシティ大崎アトリウム店 | MetaMask | USDC、USDT、JPYC |
いずれも関係者を対象とした実証実験であり、ローソンの一般利用者向けに正式提供されたものではありません。
実証では、利用者がスマートフォンのウォレットに表示した支払い用バーコードを、ローソン店舗のPOSレジで読み取ります。
その後、POSレジ、決済ゲートウェイ、ウォレット事業者のシステム間で決済情報を連携し、残高確認と支払い処理を行いました。
ローソンで確認された主な項目
- 既存POSレジとの接続
- バーコード読み取りによる決済
- 決済完了までに必要な時間
- 店舗スタッフのレジ操作
- 利用者にとっての分かりやすさ
- コンビニの店舗運営へ与える影響
- 大量の決済処理を想定した実用性
コンビニでは、短時間に多数の会計を処理する必要があります。ステーブルコイン決済を普及させるには、既存のクレジットカードやQRコード決済と同程度の速度と操作性が求められます。
ローソンでの実証は、ステーブルコインが既存POS環境の中で利用できるかを確認する重要な段階といえます。
ただし、この実証はネットスターズのStablecoin Payに関する取り組みであり、Kaiaとの提携による決済がローソンで正式導入されたという意味ではありません。
羽田空空港でもUSDC決済を検証
ネットスターズは2026年1月から2月にかけて、羽田空港第3ターミナル内の店舗でもUSDC決済の実証を実施しています。
空港は外国人旅行者の利用が多く、海外で保有する米ドル建てステーブルコインを、日本の実店舗で利用する場面を検証しやすい場所です。
訪日外国人が自国で利用しているデジタルウォレットから支払い、店舗側は日本円で売上を受け取れるようになれば、クレジットカードや既存QRコード決済とは異なるインバウンド決済の選択肢になります。
Kaiaとの提携では、こうした国境を越えた決済を、日本とアジア各国のステーブルコインへ拡大することが想定されています。
訪日外国人は自国通貨のステーブルコインで支払える可能性
今回の提携が目指すもう一つの重要な分野が、インバウンド決済です。
現在、訪日外国人が日本の店舗で支払う場合、現金、国際ブランドのクレジットカード、海外のQRコード決済などが使われています。
Kaiaとネットスターズは、訪日外国人が自国通貨に連動するステーブルコインで支払い、日本の加盟店が日本円で代金を受け取れる仕組みを検討します。
| 利用者 | 支払い | システム内部 | 店舗 |
|---|---|---|---|
| 訪日外国人 | 自国通貨連動ステーブルコイン | 交換・流動性供給・円換算 | 日本円で受け取り |
| 国内利用者 | JPYC、USDC、USDTなど | 決済確認・円換算・清算 | 日本円で受け取り |
利用者にとっては、保有するステーブルコインを日本円へ事前に両替する手間を減らせる可能性があります。
店舗側にとっては、外国通貨やステーブルコインを直接管理せず、日本円で売上を受け取れる点が導入の利点になります。
交換・流動性・清算が実用化の鍵
複数の通貨に連動するステーブルコインを実店舗で受け入れるには、レジの読み取り機能だけでは不十分です。
利用者が支払ったステーブルコインを日本円へ交換し、店舗へ確実に入金するための仕組みが必要です。
決済基盤に必要な機能
- ステーブルコインの残高確認
- 本人確認や不正利用対策
- リアルタイムの交換レート
- 十分な流動性の確保
- 複数ブロックチェーン間の接続
- 加盟店への日本円での精算
- 返金や取消処理
- 障害発生時の対応
- 取引履歴と監査記録の保存
ネットスターズとKaiaは、Kaiaエコシステムのオンチェーン外国為替オーケストレーション・レイヤー「Ratio」の活用可能性も含め、交換、流動性供給、清算スキームを共同で検証します。
異なる国のステーブルコインを店頭決済で利用できるようにするには、ブロックチェーン上の技術と、現実の銀行・決済・会計システムを一体的に設計する必要があります。
既存キャッシュレス決済との違い
| 項目 | クレジットカード・QR決済 | ステーブルコイン決済構想 |
|---|---|---|
| 利用する資産 | 銀行預金、カード与信、電子マネー | 法定通貨に連動するデジタルトークン |
| 基盤 | 決済事業者の中央管理システム | ブロックチェーンと決済ゲートウェイ |
| 店舗の受取通貨 | 主に日本円 | 日本円で受け取る仕組みを検討 |
| 利用地域 | 契約する決済ネットワーク内 | 複数国・複数通貨への拡大を想定 |
| 店舗操作 | カード、QRコード、バーコードなど | 既存端末やPOSレジの活用を想定 |
| 主な課題 | 加盟店手数料、国際決済コスト | 規制、ウォレット管理、交換、流動性、清算 |
利用者がブロックチェーンを意識せず、店舗も暗号資産を直接管理せずに利用できるかどうかが、普及の重要な条件になります。
ステーブルコイン決済のメリット
店舗側のメリット
- 新しいキャッシュレス決済手段を追加できる
- 暗号資産を直接保有せずに受け入れられる
- 売上と精算を日本円で管理できる
- 既存のPOSレジや決済端末を活用できる可能性がある
- 訪日外国人の決済需要へ対応できる
利用者側のメリット
- 保有するステーブルコインを実店舗で利用できる
- 事前に現金や日本円へ交換する手間を減らせる可能性がある
- 複数国の店舗で同じウォレットを利用できる可能性がある
- ブロックチェーン上で取引履歴を確認できる
決済事業者側のメリット
- 既存の加盟店ネットワークをWeb3決済へ拡張できる
- インバウンド決済の新しい市場を開拓できる
- 複数のウォレットやステーブルコインを一括接続できる
- 店舗向けの交換・清算サービスを提供できる
実用化に向けた課題
今回の提携は、ステーブルコイン決済の全国一斉導入を発表したものではありません。
両者はMOUに基づき、技術面、制度面、事業面から実現可能性を検証する段階です。
主な課題
- 日本国内の法令と規制への対応
- 対象ステーブルコインの選定
- 発行者と裏付け資産の信用性
- ウォレットの安全性
- 秘密鍵の紛失や不正利用への対応
- ステーブルコインと日本円の交換方法
- 決済に必要な流動性の確保
- 加盟店への入金時期と精算方法
- 返金や決済取消への対応
- ブロックチェーン障害や通信障害への対策
- 店舗スタッフと利用者への操作案内
法定通貨との価格連動を目指すステーブルコインでも、発行者、裏付け資産、利用するブロックチェーンなどによってリスクは異なります。
日常決済として普及するには、価格の安定性だけでなく、店舗での処理速度、障害時の補償、返金方法、利用者保護まで含めた制度設計が必要です。
「仮想通貨でコンビニ決済」が現実に近づく
これまで暗号資産やステーブルコインは、取引所での売買、海外送金、分散型金融など、オンライン上での利用が中心でした。
しかし、ネットスターズのStablecoin Pay、ローソンでのPOS連携実証、羽田空港でのUSDC決済、Kaiaとのアジア連携が進むことで、コンビニや小売店での日常決済へ利用範囲が広がろうとしています。
実店舗での決済が普及するためには、利用者が特別な操作を覚える必要がなく、店舗も新しい資産管理を負担せずに導入できることが重要です。
「利用者はステーブルコインで支払い、店舗は日本円で受け取る」という仕組みは、その課題を解決する現実的な方法の一つです。
よくある質問
全国約70万店舗でステーブルコインを使えますか?
現時点では使えません。約70万拠点という数字は、ネットスターズのStarPayが持つ既存の加盟店ネットワークです。今後、この基盤を活用して対応店舗を広げることが検討されています。
ローソン全店舗で利用できますか?
利用できません。2026年8月に東京都内の2店舗で、関係者を対象としたPOSレジ連携の実証実験が行われた段階です。
どのステーブルコインに対応していますか?
ネットスターズのStablecoin Payは、サービス開始時点でJPYC、USDC、USDTに対応しています。Kaiaとの提携では、アジア各国通貨に連動するステーブルコインへの拡大も検討されます。
店舗はステーブルコインを受け取るのですか?
Kaiaとの提携では、店舗への入金を日本円で行う仕組みを前提に検討しています。店舗がステーブルコインを直接保有せずに受け入れられる設計を目指しています。
利用者はどのように支払いますか?
ローソンでの実証では、利用者がスマートフォンのウォレットに表示した支払い用バーコードを、店舗のPOSレジで読み取る方法が使われました。
Kaiaとの決済サービスはすでに始まっていますか?
Kaiaとの提携はMOUの段階です。対象コイン、加盟店、提供方法、交換・清算スキームなどを今後検討します。
まとめ
ネットスターズは2026年9月11日、Kaia DLT Foundationとステーブルコイン決済に関するMOUを締結しました。
両者は、Kaia上のステーブルコインと、ネットスターズのStarPayおよびStablecoin Payを接続し、日本の実店舗で利用できる環境の構築を目指します。
ネットスターズは、約70万拠点、導入企業1万5,000社以上、年間決済取扱高2兆円超の決済ネットワークを展開しています。
ただし、約70万拠点すべてがステーブルコインへ対応したわけではありません。既存の加盟店ネットワークを将来的な展開基盤として活用する構想です。
Stablecoin PayはJPYC、USDC、USDTに対応し、ローソン店舗では既存POSレジと連携した決済実証も行われました。
利用者がステーブルコインで支払い、店舗が日本円で受け取る仕組みが実現すれば、店舗側は暗号資産を直接管理せず、従来のキャッシュレス決済に近い方法で受け入れられます。
今後は、対象店舗の拡大、法令対応、交換レート、流動性、加盟店への清算、返金、不正利用対策などを具体化できるかが焦点になります。
ステーブルコインが取引所やデジタルウォレットの中だけで使われる資産から、コンビニや小売店で利用できる日常的な決済手段へ変わるのか、ネットスターズとKaiaの取り組みが注目されます。
※本記事は公開情報を基にしたニュース解説です。特定の暗号資産、ステーブルコインまたは金融サービスの利用・購入を推奨するものではありません。
English Summary
Netstars and the Kaia DLT Foundation signed a memorandum of understanding on September 11, 2026, to explore stablecoin payments at physical stores in Japan.
The companies plan to connect stablecoins issued or circulated on Kaia with Netstars’ StarPay and Stablecoin Pay services. Customers would pay with stablecoins, while participating merchants would receive settlement in Japanese yen.
StarPay has a network of approximately 700,000 merchant locations. However, this does not mean that all 700,000 locations currently accept stablecoins. The existing network may serve as infrastructure for future expansion.
Stablecoin Pay currently supports the yen-linked JPYC and the US dollar-linked USDC and USDT. Netstars has also conducted POS-integrated payment trials at two Lawson stores in Tokyo.
The partnership may create a new payment option for both Japanese consumers and international visitors, but commercial deployment will depend on regulatory compliance, liquidity, exchange and settlement systems, merchant adoption and consumer protection.

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