自治体のチラシも生成AIで――東京都北区がCanvaで行政広報を変える実証へ

ai

東京都北区とSB C&S株式会社は2026年10月15日、「生成AIを活用したデザイン作成業務の効率化の実証に係る協定」を締結しました。

北区の一部職員が、AIを用いたクラウド型デザインツール「Canva」を利用し、イベントチラシ、窓口掲示物、公式ウェブサイト掲載情報、SNS投稿画像、動画コンテンツなどを作成します。

今回の特徴は、生成AIを文章作成や情報検索だけに使うのではなく、行政情報を住民へ「分かりやすく伝える」ためのデザイン業務に活用する点です。

実証期間は2026年10月から12月までを予定しています。利用状況や職員の満足度、制作業務の効率化、成果物の品質向上などを確認し、今後の本格導入や対象部署の拡大を検討します。


東京都北区とSB C&Sが協定を締結

北区とSB C&Sは、デジタル技術を活用した業務効率化と情報発信の高度化に向け、相互に連携して自治体DXを推進することを目的に協定を締結しました。

協定名 生成AIを活用したデザイン作成業務の効率化の実証に係る協定
締結日 2026年10月15日
連携主体 東京都北区、SB C&S株式会社
使用するツール AIを用いたクラウド型デザインツール「Canva」
対象 北区職員の一部
実証期間 2026年10月~12月予定
主な目的 制作業務の効率化、成果物の品質向上、区民への効果的な情報発信

北区はこれまでも「区政のあらゆる場面でのAI活用」を掲げ、生成AIの全庁導入や民間事業者との実証実験を進めてきました。

今回の協定では、生成AIの活用対象を文章作成などの内部業務から、住民が直接目にする広報コンテンツの制作へ広げます。


チラシや窓口掲示物、SNS画像を作成

実証では、北区の一部職員へCanvaのライセンスを提供し、実際の行政業務で利用します。

想定されている制作物

  • 講座やイベントの案内
  • イベントチラシ
  • ポスター
  • 窓口掲示物
  • 北区公式ウェブサイトへ掲載する情報
  • 庁内資料
  • SNS向け投稿画像
  • 動画コンテンツ

Canvaのテンプレート、デザイン素材、AIによる作成補助などを利用することで、デザイン業務を専門としていない職員でも、情報を整理した広報物を効率的に作成できる環境を整えます。

SB C&Sはライセンスを提供するだけではなく、利用環境の構築、管理者・利用者向け研修、実際の業務での活用支援まで一貫して担当します。


「作るAI」から「伝えるAI」へ

自治体での生成AI活用は、文書の下書き、要約、議事録作成、庁内情報の検索など、職員の事務作業を効率化する用途から広がってきました。

北区の実証では、行政情報をどのようなデザインで住民へ届けるかという、情報発信の工程に生成AIを活用します。

行政が発信する情報には、制度の説明、申請方法、開催日時、対象者、必要書類、問い合わせ先など、多くの要素が含まれます。

内容が正確でも、文字が多すぎたり、重要な項目が目立たなかったりすれば、住民へ十分に伝わらない可能性があります。

テンプレートやAIによる作成補助を利用し、情報の配置や見せ方を改善できれば、職員の制作負担を減らすだけでなく、住民が必要な情報を見つけやすくなる可能性があります。


区民の利便性も検証対象

今回の実証は、職員の作業時間を短縮することだけが目的ではありません。

北区は、チラシやポスター、公式ウェブサイト掲載情報などを、より分かりやすく魅力的なデザインで表現し、区民への効果的な情報発信につなげる方針です。

実証では、主に次のような効果が確認されます。

  • Canvaの利用状況
  • 利用した職員の満足度
  • 広報物作成にかかる業務の効率化
  • 制作された広報物の品質向上
  • 行政情報の分かりやすさ
  • 住民への情報発信の改善可能性

職員側の効率と、情報を受け取る住民側の分かりやすさを、同時に検証する取り組みといえます。


実証は2026年12月まで

実証期間は2026年10月から12月までの予定です。

実証結果を踏まえ、北区はCanvaの本格導入や、利用対象となる部署の拡大を検討します。

現時点では本格導入が決定したわけではなく、業務時間を何%削減できたか、広報物の品質がどの程度改善したかといった具体的な成果も公表されていません。

したがって、「北区が生成AIによる広報制作を全面導入した」と表現するのは正確ではありません。

現在は、一部職員による実務利用を通じて、効果や課題を検証する段階です。


行政広報で必要になる確認

生成AIやデザインテンプレートを行政広報へ利用する場合、制作速度や見栄えだけでなく、情報の正確性とアクセシビリティも重要です。

本格導入を検討する際には、実務上、次のような確認が必要になると考えられます。

  • 日付、対象者、申請条件などを職員が最終確認する体制
  • 誤解を招く画像や表現が生成されていないかの確認
  • 高齢者や障害のある人にも読みやすい文字サイズと配色
  • 公式ウェブサイトと紙媒体での情報の整合性
  • 使用する画像、イラスト、フォントなどの利用条件
  • 個人情報や未公表情報を入力しないためのルール
  • 部署ごとにデザインがばらつかないための共通テンプレート
  • 公開後に誤りが見つかった場合の修正・差し替え手順

生成AIが広報物の制作を補助しても、掲載内容に対する行政の責任がなくなるわけではありません。

AIによる作成補助と、職員による内容確認を組み合わせる運用設計が重要になります。


自治体広報の標準化につながる可能性

自治体の広報物は、部署や担当者によってデザインや制作方法が異なる場合があります。

共通テンプレートとクラウド型デザインツールを利用すれば、一定のデザイン品質を保ちながら、複数の職員が広報物を作成しやすくなります。

過去に作成したチラシを再利用したり、紙のポスターをSNS向け画像や動画へ展開したりすることも考えられます。

一つの情報を紙、ウェブサイト、SNS、動画など複数の媒体へ効率的に展開できれば、自治体広報の運用方法そのものが変わる可能性があります。

一方で、テンプレートを使用するだけで情報が自動的に分かりやすくなるわけではありません。誰に何を伝えるのかを整理し、住民の視点で内容を確認する工程は引き続き必要です。


他の自治体にも広がるか

今回の北区の取り組みは、生成AIの活用分野が、行政内部の事務効率化から市民向けサービスへ広がっていることを示す事例です。

チラシ、窓口掲示物、ウェブサイト、SNSは、多くの自治体で日常的に制作されています。

北区の実証で、制作時間の短縮、職員の使いやすさ、成果物の品質向上などが確認されれば、同様の課題を抱える自治体へ活用が広がる可能性があります。

今後は、単にAIを導入したかどうかではなく、住民が行政情報を理解しやすくなったか、必要な手続きへたどり着きやすくなったかという効果の検証が重要になるでしょう。


まとめ

東京都北区とSB C&Sは2026年10月15日、生成AIを活用したデザイン作成業務の効率化に関する協定を締結しました。

北区の一部職員がCanvaを利用し、講座案内、イベントチラシ、窓口掲示物、庁内資料、SNS投稿画像、動画コンテンツなどを作成します。

実証期間は2026年10月から12月までで、利用状況、職員満足度、制作業務の効率化、成果物の品質向上などを検証します。

今回の取り組みは、生成AIを行政文書の作成だけでなく、住民へ情報を分かりやすく伝える広報業務へ活用するものです。

ただし、現時点では実証段階であり、本格導入や具体的な削減効果は確定していません。実証結果を踏まえ、対象部署の拡大や本格導入が検討されます。

自治体の生成AI活用は、「作業を代行するAI」から「行政情報を伝わりやすくするAI」へ、新たな段階に入り始めています。


English Summary

Tokyo’s Kita City signed an agreement with SB C&S on October 15, 2026, to conduct a pilot program using Canva, an AI-assisted cloud design platform.

Selected municipal employees will use the platform to create event flyers, public counter notices, internal documents, website information, social media images and video content.

The pilot is scheduled to run from October through December 2026. Kita City and SB C&S will examine usage, employee satisfaction, production efficiency and the quality of the resulting materials.

The initiative is notable because it applies generative AI not only to internal document creation but also to improving how government information is communicated to residents.

The project remains in the pilot stage. Kita City has not yet announced measurable results or made a final decision on a full-scale rollout.


参考・出典

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